まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

とある飛空士への誓約8

ストーリー
ウラノスに対抗するため、第二次イスラ艦隊と共闘の道を選んだエリザベート
逼迫する財政を立て直すため、彼女はバルタザールの隠された血筋に目を付ける。
一方慧剣皇王国では、セントヴォルトとの和平を願うかぐらが軍事クーデターをもくろんでいた……。



エリアドールの七人が、遂に本格的に世界を動かし始める決定的な巻。前回の主人公が清顕とイリアだとしたら、今回の主人公はバルタザールとかぐら、そしてミオでしょうか。
セントヴォルトを代表するまでになったバルタと、悲壮すぎる決意の下に自国を変えてみせたかぐらのようやくの再会は、あまりに愛おしくて、そして切なくて……。
七人の勇気と決断が、次の最終巻で何をもたらすことになるのか、緊張と興奮が高まって止みません。


シリーズ屈指の癒し系ことバルタ機長。セントヴォルト帝国作戦司令部の中枢を担うまでになりながらも、やっぱりエリザベートことセシルにはいいようにやられてしまうところが実に微笑ましい。
いやほんと、セシルはいい女になりました……いやむしろ悪い女か? 何をするにも弱気だったあの頃の彼女のことを思うと、この成長ぶりが嬉しいような、残念に歪んでしまったような(笑)。ともあれ、バルタとの主従コンビは凄くはまっていて、ニヤニヤしながら見てしまいますね。
一方、ウラノスではまたも政変が勃発。クレアも彼女なりに頑張ってはいたのですが、やはり政治の妖怪どもは伊達ではなかった。
ミオ視点は相変わらず、息つく暇もないほどピンチに次ぐピンチで、作者のSっぷりが垣間見えます。クレアも同じく大変な目に遭っていて、薄幸の美少女っぷりを存分に発揮。
そんな窮地の中、ミオが思いついた、彼女がずっとウラノスにいることの意味……。クレアのため、エリアドールの七人のため、清顕のために、自分にできることは何か。
彼女が取ったこの行動が、全てを変えるきっかけになるかもしれません。もし全てが上手くいったときには、ミオ自身が幸せであるようにと願わずにはいられませんね。


ミオと同じくらいに、孤独な戦いを強いられていたかぐらさん。セントヴォルトとの戦争を止めるため、彼女はあまりに悲しい決意をしてしまいました。
でも、かぐらさんの戦いのおかげで、そしてバルタの仲間を思う気持ち(!)のおかげで、慧剣皇王国とセントヴォルト帝国の間には再び架け橋がかかりました。
橋の上での、愛しあうふたりのひとときの再会。とても素敵で、でもとてつもなく悲しい時間。
バルタザールさんがまた超イケメンでねえ……! ずっと馬鹿らしいとか言ってきたくせに、ここにきて、七人の誓約を持ちだしてくるとかずるい。グッときちゃうだろ。かぐらさんの甘えにしっかり応えちゃうところなんかいっそ可愛らしい。ほんと至高のツンデレさんである。
かぐらさんにも、これ以上ないくらい伝わったことでしょう。彼が本当に仲間たちのことを、かぐらさんのことを思っていることが。
それだけに、このラストは……。最終巻を前にしてのこの終わり方は……。なんか、一気に体の力が抜けてしまった感じです。正直、他に何かやり方があったんじゃないかとか、そういうことを考えてしまいますね……。
まだ、心はとても落ち着いていませんけれども。次こそがシリーズを通じての最終巻です。あの伝説の飛空士も登場しました。
エリアドールの七人は、世界をどう変えていくのか。きっと待ち受けているであろう壮大な結末に、もはや期待感しかありません。ただただ、楽しみです。


カルエルさん、相変わらず無神経なんだね……なんか安心したわ。