まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

レオ・アッティール伝I 首なし公の肖像

ストーリー
西のアリオン王国、東の聖ディティアーヌ連盟と二つの列強に挟まれたアトール公国。
その公子レオ・アッティールはアリオンへ人質同然で送り出され、辺境の太守のもとで武芸と学問に励んでいた。
そんな中で、アトールと接する中立勢力・コンスコン寺院とアリオンの関係が悪化、今にも戦が始まろうとしていた……。



長年隣国で人質として少年時代を過ごした小国の公子が、とある騒乱をきっかけに羽ばたいていく本格ファンタジー(たぶん)。
(たぶん)というのは、まだまだ物語がプロローグに過ぎないからですが……これから壮大なお話が始まっていく予感をぐいぐいと感じさせてくれました。
大切な女の子のことを奪い去ろうとする敵役がなんともムカつく男で、そのくせ主人公はどうにもパッとしなくて、ストレスの溜まる展開も多かったのですが、ラストで主人公らしい輝きを見せてくれたのは熱かったです。


主人公・レオは、一国の公子でありながら、幼い頃から大国アリオンへ人質として預けられた少年。
実の母からは捨てられたも同然の扱いをされ、預け入れ先では太守の息子たちからいびられ……。太守クロードやその娘フロリーとの心温まる交流もありましたが、公子としてはやはり恵まれたとはいえない生活。
彼自身も、多少身体を鍛えてきたとはいえ格別に強いわけでもなく、知識が飛び抜けているわけでもなく、社交性に富んでいるわけでもなく、正直いって地味な主人公だというのが第一印象です。
一方、コンスコン寺院に集まったアトール貴族の嫡男・パーシーや、彼と共闘する僧兵のカミュ、セーラの兄妹、そして子供っぽい傭兵のクオンといった人物たちは、それぞれ魅力的で味わいのあるキャラクターでしたね。特にクオン君が気に入ってます。
国同士の折衝や裏工作など、複雑な手順を経て巻き起こった騒動。そんな中、少しの偶然からレオと彼らが邂逅を果たしていく展開には、英雄が運命に誘われて集う様を見るようで胸が踊りました。


窮地を脱してアトールへと戻ったものの、待っていたのは針のむしろのような周囲の視線。さらに彼の後を追うようにやってきた、フロリーを執拗に付け狙うアリオンの王族・ヘイデン。
レオのことを侮るアトールの貴族たちと、彼の目の前からフロリーを攫って行こうとするヘイデンと。
あまりにむかっ腹の立つ状況に対し、レオは遂に主人公らしく立ち上がります! いよっ、待ってました!
未だ、「力」の使い方を理解し始めたばかりのひよっ子ではありますが、これから彼がどのようにして歴史に名を残すような人物へと成長してゆくのか、見守っていきたいですね。


イラストは岡谷さん。表紙はとても見栄えのする1枚ですね。アングルが素晴らしいと思います。
いかにもな悪人顔のヘイデンもGOOD。


レオとフロリー以上にクオンとセーラの関係がどうなっていくのかが楽しみでならない。