まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

紅霞後宮物語

紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

ストーリー
女性の身ながら不世出の軍人と噂される関小玉。
ある日彼女は、かつての相棒にして今は皇帝となった文林から後宮に入ってくれと懇願される。
小玉はいきなり夫婦となった文林との関係に戸惑いつつも、1年で皇后にまで上り詰めてしまい……。



第2回富士見ラノベ文芸大賞<金賞>受賞作品。
女将軍が33歳(!)でいきなり後宮に入れられて、するっと皇后になっちゃって、派閥やら陰謀やらでどろどろの後宮の中を、型破りなまっすぐさで生き抜いていく中華風後宮ストーリー。
これはよいものでした! なんといっても主人公・小玉がめちゃくちゃ魅力的です。これが女にモテる女か。
恋愛までには至らないけれど深い絆で結ばれた皇帝とのやりとりも、大人同士の関係という感じで素敵でした。


ずっと軍の中で過ごしてきた女性が、突然後宮の中に放り込まれる!
女の欲望と嫉妬が溢れる世界で、市井の生まれながら皇帝のお気に入りになり、皇后にまでなった小玉はまさに標的というもの。
当然のようにあの手この手の嫌がらせを受ける小玉ですが、あまりに鈍すぎて嫌がらせを嫌がらせと気づかないというんだから色んな意味で凄い。根っから大物なんですね……。
誰かを疑ったり、表で笑って裏で憎んだり、といったことが当たり前の後宮で、ひとり明朗快活に、おおらかに、また打たれ強く生活していく小玉は、本当に素晴らしいヒロインでした。いい年なのに言動がやたらかわいらしくってずるい!
皇帝の血縁で超大物の妃殿下や、小玉の寵愛の秘密を探ろうとしてきた妃までも、彼女自身のファンにしてしまう女性キラーっぷりがまたたまりません。


後宮に入ったはいいものの、軍を率いる機会に恵まれずに思い悩む小玉。
後宮はやっぱり彼女のホームではなくて、軍を預けてくれると約束したはずの皇帝・文林もどうも頼りなくて、もやもやと。
文林もね、なかなか思惑を見せないところがあって、難物な男でした。小玉への気持ちだけは確かなもので、そこはにやにやしちゃうんですけど。
一方、小玉が皇后になったことで、やはりというか、大きな事件が起こってしまいます。
事件を解決する小玉の手腕の見事さ。今までと打って変わって苛烈で鋭い一面は、やはり妃というよりも軍人らしくて、でもそんなところでさえも彼女の魅力の一部にうつってしまう。
とことん、一本芯が通った“強い”ヒロインでした。彼女の活躍に今後も期待です。


苦労人の梅花さんが結構好き。