まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

さびしがりやのロリフェラトゥ

さびしがりやのロリフェラトゥ (ガガガ文庫)

さびしがりやのロリフェラトゥ (ガガガ文庫)

ストーリー
高校生ながらライトノベル作家としてデビューを果たした常盤桃香
しかし担当編集と喧嘩をしてしまい、彼女の短い作家人生は終わりを告げてしまう。
そんなある日、桃香は旧校舎に吸血鬼が住んでいるという噂を聞いて……。



さがら総先生がガガガ文庫で新作を書くということで、喜び勇んで手に取りました。
学校の旧校舎に住み着いた小さな吸血鬼の女の子。彼女のまわりで起こる事件に少年少女が首を突っ込んだり巻き込まれたりしていく、ちょっと儚くて切ない吸血鬼×学園青春ストーリー。
同じ時間軸を違うキャラクターの視点から次々に描いていく構成で、次の章に行くたびに人物や事柄の印象がまるで変わるという面白さが味わえる1冊でした。いやあ、ほんとに巧いというか、テクニカル。さすがはさがら先生というところですか。


最初の章の語り手は、行き詰まり気味&ぼっち気味の女子高生ライトノベル作家桃香
彼女が旧校舎でひとりの吸血鬼と出会うところから、全てが始まります。
少女と吸血鬼の交友が描かれたこの章だけ読むと、いくつかの謎を残しながらもほろ苦くていい話だったな、というだけの印象なのですが、第二章、第三章と視点主を変えたお話が語られていくことで、この章の味わいがガラリと変わってくるから不思議。
特にこの桃香というキャラクターの、主観と客観のギャップには痺れました。なるほど! 上手いことやってくれたなあ!


桃香シギショアラ。結とポチ。
二組の少女たちは全然お互いのことを理解できていなくて、基本すれ違ってばっかりだったけれど、それでも確かに紡いだものがありました。出会いは決して無駄なんかじゃなくて、桃香にもシギショアラにも、手にしたものがありました。それは、桃香のことを見れば一目瞭然ですよね。
女の子の紡いだ物語が、いつかどこかで、女の子のもとへと届いたことを願わずにはいられません。
そして、全体の観察者としての役目を果たしてくれた少年・風吹ですが……彼自身の物語は、結局ほとんど語られぬまま終わったような気がします。
もし次があるのならば、ぜひ彼のことも知りたいですね。誰か他の人の主観で。


イラストは黒星紅白さん。各章の扉絵が印象的でよかったです。
シギショアラがロリ可愛い。でも大人ショアラも存外に悪くない。


ユズに並々ならぬ大物オーラを感じる。