まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

コロシアム

ストーリー
高校生の萩原悠人は、ある日ネットで拾ったアプリから「コロシアム」というデスゲームの存在を知る。
自殺したと噂のクラスの中心人物・月島伊央がそこに参加していることを知った悠人は、画面越しに彼女をサポートし始める。
一人で少女をサポートすることに限界を感じ、クラスメイトたちにアプリのことを明かす悠人だったが……。



土橋先生による新作デスゲームもの。1人の女の子のサバイバルゲームをクラス全員でフォローしていくという形が新鮮で面白かったです。
命を実際に賭けている女の子と、自分は安全な場所に身を置いているクラスメイトとの意識の差……。
学園の生徒たちが囚われた集団心理を、少女たちの圧倒的な「個」が破壊していく、爽快でもあり恐ろしくもある展開に心奪われました。


見知らぬ土地に囚われた30人。ナイフと拳銃。そして外部と唯一つながる手段・自走式ワーム。
いきなり極限状況に置かれた女の子と、それをワーム&アプリ越しに監視する男の子。設定が早速悪趣味で最高です。
初めこそ右も左も分からない中での手探り冒険状態で、それはそれで緊張感があったのですが、まずはクラスメイトへ、そして学園全体へと情報共有がされたことによって「コロシアム」ゲームの大枠が浮き彫りになってからは、一気にゲームとしての戦略性が増してきました。
伊央がいる画面の中と、悠人がいる画面の外、両方を絡ませつつもそれぞれのドラマが進行していくのが特に面白かったですね。
伊央を助けるためにはお金が必要で、それはクラスメイトが負担しなきゃだから、女子が協力して下着を買ってあげて、なんてあたりが生々しくて「うわぁ」って思いました。
同情心を出しているものの、それが思いっきり表面的なのが見て取れるクラスメイトたちの姿は実に気持ち悪くて、なんか人間嫌いになりそうです……。


物騒なゲームではあるものの、同じ学園の仲間同士、平和的に終われるのではないかと思ったけれど、そんなのはやっぱり甘い考えでしたね。
画面の外の指示にもとづいて、いつの間にか暴力が正当化されていく薄気味悪さ。少女たちは追いつめられて精神を病んで、そして……。
さて、ここからが本番です。「外」にいて、ゲームの「中」での生死には直接関係がないのだと、ある意味でたかをくくっていた学園の生徒たちも、ようやく気付くことになりました。
今後いったいどんな展開が待っているのか、まったく読めないストーリーに期待です。最後に勝つのは誰か……。


イラストは白身魚さん。久しぶりに土橋先生とのコンビ復活ですね。可愛いけれどどこか儚さのある絵柄がピッタリ。
ラストの見開きが特に印象的で素晴らしかったです。


この弾道計算アプリ、ちょっと優秀すぎて怖いんだけど。