まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

僕らはみんな逝きている

僕らはみんな逝きている (角川スニーカー文庫)

僕らはみんな逝きている (角川スニーカー文庫)

ストーリー
ふとしたことがきっかけで、民俗学を調べている少し変わった美少女・水ヶ原水鶏と出会った月夜見灰時。
灰時は彼女に連れられて赴いた公園で、誰かが制作したらしい呪いの道祖神の存在を知る。
そしてやってきたクリスマスイブ、呪いは発動し、惨劇が始まる……。



人々を次々に殺していく象頭の化物から逃げまわりつつ、その呪いを解くべく奮闘する少年少女たちの姿を描いたパニックサバイバルアクション。
あまりにあっさりと人が命を失っていくところは大変にエグいのですが、そんな中で必死で生き延びて、呪いをかけた少女の謎を解き明かしつつ事態を解決しようと動くスリリングな展開に手に汗握る作品でした。
ただ化物が襲ってくるだけではなく、その呪いの背後に見え隠れするとある少女の念が実におぞましくて、独特の不気味さが物語全体に漂っていたのが印象的です。


お話は、メインのキャラクター数人の視点から描かれています。
学校や職場で、小さな事件はありつつも日常の範囲内からは抜け出すことなく、毎日の生活を送る彼ら。そんな人々の日常が、よりによってクリスマスイブという日に全て壊される恐怖たるや。
まず化物の造形が凄いですね。首から下はスーツを着た男なのだけど、目が4つ、鼻が2本ある象頭を持った謎の怪物。設定もそうですが、こればかりはイラストレーターさんに拍手ですわ。生理的嫌悪が凄まじい。
反射的に“逃げなきゃ”って思わせる怖さが詰まったデザインだと思いました。夢に出そうです。
呪いを込めた道祖神も、ちょっとげっそりしてしまうくらいリアルに狂っていて、なんかもう……やめて……。


象頭から逃げながら、それを生み出したと思わしき道祖神を破壊しようと立ち上がる灰時、水鶏、英也。
しかし彼らの前に立ちふさがるのは、なぜか象頭ではなくニセ情報に踊らされた人間たちだったりするから呆れ返ってしまう。
ほんとことごとく、見ていてイヤになる物を用意してくるのが上手くて腹が立ってきますね!
いつメインキャラ陣が退場するか分からないドキドキ感、そしてなぜ象頭は人を襲うのかという謎解き要素など、気になることがあまりに多くて、最後まで一気に読んでしまったのですが……結局、事件は真の解決には至らず、次巻へと続きます。
あーもう! 勘弁してくれよ! って感じですが、とにかく続きが早く読みたい。楽しみにしています。


イラストは奈津ナツナさん。もうこの表紙イラストだけで「やられた!」感が凄い。
道祖神の光景も少し見てみたかった気も……いや、やっぱり遠慮しておきます。


中城がここ最近出会った中で一番のクズキャラクターかもしれない。