まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンVII

ストーリー
旭日連隊を率いて行方不明だった帝国皇帝の身柄を確保することに成功したイクタ。
しかし、皇帝の傍らに控える佞臣トリスナイの巧みな謀略に踊らされてしまう。
彼は遂に、イグセム派の将校として捜索隊を率いていたヤトリと、戦場で対峙することを余儀なくされる……。



イクタとヤトリ、ふたりの主人公の正面対決が描かれる、怒涛にして急展開の巻。
おいおいおいおい、こう来るか……ええー……。
ちょっと参っちゃいました。いや、めちゃくちゃ凄い1冊だったんですけど、ちょっとこれはね……ああ……。


ストーリーの合間合間に織り込まれる、イクタとヤトリの幼少期のエピソード。
これまで不思議なくらいに固い友情で結ばれているのを見せつけてきたイクタとヤトリですが、その絆がどのようにして築かれてきたのかを、ここにきて丁寧に描き上げてみせる……。
よりによって、お互いと戦わざるを得ない状況へと追い込まれていく、この時にですよ! どんだけドSなんですかこの作者は。
子供時代のイクタは、今とはだいぶ印象が異なり、快活で活発で、科学に向ける情熱をまっすぐに行動に写している少年でした。
そんな彼と出会ったことで、「イグセム」の檻から一歩抜け出すことになるヤトリ。
共に刺激し合い、高め合いながら一緒に成長できるただひとりの運命の人……。きっかけとなる過去の出来事が語られたことで、ふたりの絆の強さを改めて感じさせられました。


イクタを討伐するため、自らの内の「ヤトリシノ」を殺し「イグセム」となったヤトリ。なんと凄絶なヒロインでしょうか。
他ならぬイクタが、自らに匹敵するとまで述べるヤトリの作戦指揮能力とイグセムの大軍勢。
双方手の内は知り尽くしています。寡兵での防衛戦を強いられるイクタとの、知と知をぶつけ合う壮絶な戦いはただただ迫力でした。
そして決着。いやもう、何も言えません。


何もかもが変わってしまいました。正直、この作品のいちばん大きな魅力が失われてしまった気さえするのですが、ここまで来たら最後まで付き合わざるを得ないでしょう。
このどん底からどう立ち上がっていくのか……それともここからさらに落ちてゆくのか。帝国の崩壊は間近です。
もはやハッピーエンドは見えませんが、次の展開が気になって仕方ないので、早く続きをお願いします!


癒しておくれよ、我が友マシュー……。