まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

運命に愛されてごめんなさい。

ストーリー
滝学園には運命力学に従って、毎週月曜日に転校生がやってくる。
そして彼らは転校初日、全校生徒の前で必ず的中する予言を口にするのだった。
ある週の転校生・シイナは、何の取り柄も人望もない一生徒・皐月純が月末までに生徒会長になると予言するのだが……。



第21回電撃小説大賞<金賞>受賞作品。
クズで変態な主人公が、転校生がもたらす運命力に従って生徒会長への道を駆け上がるハチャメチャコメディ。
うーん不条理! でも嫌いじゃない! いきなり無茶苦茶な設定だらけだけど、運命力学で決まってるなら仕方ないよね!
理屈とかそういうの抜きにしてひたすらテンションだけで乗り切っていく、新人賞らしい勢いを感じる作品でした。


生徒会長、それは全校生徒6000人のトップオブザトップ。
非モテだけれど女の子大好きで、会長になった暁には左右に美少女を侍らせよう、なんて思いっきりゲスな思考の持ち主たる主人公・純ですが、そんな彼でも予言されれば生徒会長になれるのです。なぜならそれが運命だから!
権力にしがみつき、逮捕拘禁から武力投入まであの手この手で純の邪魔をしてくる現生徒会長・五十嵐を相手に、少数精鋭でゲリラ的な戦いを挑む純たち。
もはや「学校の生徒会長選」なんて穏やかなやりとりではなく、完全に「現政権に対するクーデター」にしか見えなくて、冷静に考えると何やってんだこいつらとしか思えないんですが、ノリのままにド派手な無茶をやらかす彼らは実に楽しそうで、なんていうの、こういうのも青春っていうのかな……(?)。


運命の後押しと皆の協力を得て政権奪取を果たした純ですが、次の転校生がもたらした予言は、また新たな生徒会長の誕生でした。
追う側から追われる側へとなった純が、権力を守るために圧政を敷いては仲間から次々に愛想を尽かされ、どんどん落ちぶれていくさまは、まるで一発屋芸人の転落人生を見ているようでした。自業自得な部分も多々あるので、あんまり同情はできませんが!
そんなアホな純に、なんだかんだで隣に付き添ってくれた女の子・シイナ。純には厳しいことしか言わないナチュラル毒舌な彼女ですが、彼女がいたからこそ純はここまで頑張れたのだろうと思います。クズはクズなりに、最後には大切なものを見つけられてよかったです。
さて、綺麗にオチのついた今作ですが、続きはあるのでしょうか。純とシイナの今後はぜひ見たいので、もし続くようならば読みたいですね。


イラストは智弘カイさん。調子に乗った純や、そんな彼を思いっきり蔑んだ目で見るシイナの表情がとてもよかったです。
特に281ページのシイナがたまらん!


この推薦帯コメント、本当にこの作品を読んで書いたのか……?