まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

クズと金貨のクオリディア

ストーリー
底辺高校生・久佐丘晴磨と、天使のような後輩・千種夜羽。
同じ階層にいられるはずのなかった二人は、とある偶然をきっかけに急接近してしまう。
行方不明の女子をなりゆきで一緒に追うなか、晴磨と夜羽の思惑は大きくすれ違っていって……。



さがら総先生と渡航先生の共著!? なんじゃそりゃ! 意味分かんないけど読むしかないだろ! ということで。
いやあ、凄いもん読みました。ふたつの目線の一人称でストーリーが紡がれていく展開があまりに見事。2人で書くってこういうことか!
まあ実際にはこの作品がどんな風に書かれたのかなんて分からないんですけど、仮にさがら先生と渡先生がヒロインと主人公の一人称部分をそれぞれ担当したとするのなら、2人ともが器用な作家さんだからこそ成り立った1冊なのではないかと思います。
紛れもなくクズな主人公と、彼をさらに軽く上回るクズなヒロインというコンビの組み合わせが実に面白かったですね。


主人公の晴磨は、非モテで友達もおらず、世の中をひねくれまくった見方でしか見られない性格のわるーい高校生。彼の語る部分は(恐らく)渡先生が担当。
ヒロインの夜羽は、見た目は完璧な清楚系美少女なのに実は金の亡者で、クラスメイトに高い金利で金を貸しては笑顔で脅して取り立てている、自意識過剰な高利貸し美少女。彼女の語る部分は(たぶん)さがら総先生が担当。
このふたりの主人公が入れ替わりで語り手となって、ストーリーが描かれていきます。なお、上に書いた担当作家は完全に私の妄想です。そんなに的外れではない気がするけど。
どちらも強烈な個性を持ったキャラクターということで、それぞれの語りっぷりも非常に個性的。同じものを見ているのにそれに対して抱く感想が真逆だったり、同じ例えを持ちだしているのに結論がまるで別物だったりして、“ふたつの視点”というものを非常に効果的に使って、コミカルに仕立ててくれていました。
特に夜羽さんは面白かったですね。最初こそ普通の可愛らしい女の子なのかと思いきや、当たり前のような顔をしてエグいことしてきますからね。まあそれでも最終的には可愛いんだからずるいんですけど!


夜羽に半ば強制的に誘われて生徒たちの失踪事件を探るうち、いつの間にか距離が近づいていくふたり。
頭の中ではとんでもない女だと思っていても、縁を切ったばかりでも、目の前で泣いてる姿を見てしまったら、まあね。しょうがない。この期に及んで「顔だけはいいから」とかなんとか言い訳してるあたりはやっぱりひねくれてますけど。
しかし、ラスト数ページの急展開にはさすがにびっくりしました。まったくもう、最近の若い子ときたら!
ともあれ、この先の展開が全く読めない続き方をしてくれたので、次巻が楽しみで仕方ない。あるよね? 続いてくれるよね? 待ってるよ!


イラストは仙人掌さん。こういうアングルの表紙好き。
夜羽がザ・美少女! という感じのキャラデザで、気を抜いてるとうっかり好きになっちゃいそう。


誤字とか脱字とかあまり気にしない方なんですが、惜しむらくはひとつだけ……よはねすの台詞中の箸と茶碗、たぶん逆だよね?