まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

グランクレスト戦記 4 漆黒の公女

ストーリー
テオとの戦いに敗北し、大工房同盟・盟主の威信を失ったヴァルドリンド辺境伯マリーネ。
彼女は幻想詩連合の弱腰を見越して、仇敵であるアルトゥーク伯ヴィラールの命を狙う。
連合の盟主・アレクシスからの和平案を蹴り、新たな体制をもって同盟をまとめ上げたマリーネは、大軍勢を率いてアルトゥークを包囲する……。



アルトゥーク編の最後にして、大陸の勢力図がまた大きく動く巻。
いやあ素晴らしかった。マリーネ・クライシェが“敵対国の君主だけれどまだ仲間になる余地がありそうな相手”から“いつか絶対に倒さなければならない大敵”へとランクアップを果たした感があります。
そしてある英雄の散り様も見事でした。彼はある意味でテオやシルーカ以上に主人公らしく、最後まで輝いていましたね。


アルトゥークの中枢から離れ、テオとシルーカはふたりっきりで領地の視察へ。
テオの言動にいちいち顔を赤らめて嬉しそうにするシルーカが可愛すぎてもうやってられねえ!
このタイミングで両者の距離が一気に進んだのは少し意外でした。まあ、物語が始まってから作中では結構な時間が経っていますものね。
戦いの方面での活躍がほとんど目立たない分、今回はニヤニヤ補給要員に回った……ということでひとつ。


同盟のトップ・マリーネは大きな一歩を踏み出しました。あとがきのワードを借りるならば「闇堕ち」! もうすっごい闇堕ち!
理想の実現のために全てを投げ捨てる覚悟があまりに悲壮で、アレクシスと恋を語り合った頃のマリーネはもういないのだと切ない気持ちにさせられます。
手段を選ばぬ攻め手や、裏での取り引き。もはや完全に魔王の雰囲気で、好きにはなれないけれども格好良かったです。
それに比べてアレクシスときたら! この盟主の下では連合はもはや風前の灯か、とも思えてしまいますが、ここからの反撃があるのかどうか、注目ですね。


アルトゥークを救うため、軍を率いて集結する君主たち。寡兵ながら大軍勢を相手に一歩も引かない兵士たち。そして何より、傍らには愛する女性。
他にやり方があったのではないかとか、アレクシスが立ち上がっていればとか、色々ともやもやは尽きませんが、少なくとも戦いの終幕はとてもロマンティックだったと思います。
さて今度こそ、テオとシルーカ、主人公コンビが活躍するべき時です。次巻はテオの故郷・システィナが舞台ということで、久しぶりに辣腕を振るうシルーカが見られるのではないかとワクワクしています。楽しみ。


コリーンが地味に可愛かったのですが、再登場はあるや否や!