まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ジンクスゲーム

ジンクスゲーム (GA文庫)

ジンクスゲーム (GA文庫)

ストーリー
電車事故で命を失った蒼馬は、不死身の男・ロストマンから新たな命と共にジンクスという力を与えられる。
最愛の妹を救うため、ロストマンから提示されたミッションへ挑む蒼馬。
しかし彼の前に、他のジンクス使いたちと、再開した幼なじみの少女・鈴蘭が立ちはだかる……。



第5回GA文庫大賞<優秀賞>受賞作品。
簡単に人の命を奪い、それを自在に分け与える呪われた力「ジンクス」を持った5人が、騙しあい出し抜きあいながら謎の殺人鬼「毒りんご」を狙う狂気の異能サスペンス。
事前に予想していた「デスゲーム」ものとは少し毛色が違って、推理ゲームに異能バトルが加わったような印象でしたが、これはこれで楽しかったです。
当たり前のように他人の命を奪うことのできるジンクス使いたちは、主人公を筆頭にどこかぶっ壊れていて、空恐ろしくも魅力的なキャラクターが揃っていました。


主人公・蒼馬が手に入れたのは、相手の目を3秒間見つめるだけで命を奪うジンクス【バジリスク】。
大怪我を負った妹の命を延ばすためとはいえ、当たり前のように周囲の人々の命を奪い、妹に分け与えてしまう蒼馬の異常っぷりが際立っていました。
他の4人のジンクス使いも、見た目こそバラバラながら、それぞれ中身は他人の命を奪うことにためらいのない人間ばかり。いい人のように見えても裏では何人も天国に送っているわけで、全く油断がなりません。
危険なジンクス使いを相手取って、ときに力を借り、ときに敵対しあいつつ、「毒りんご」を追いかける悪趣味なゲームに、ゾクゾクさせられました。
5つのジンクスはそれぞれ別の能力ですから、ライフを奪われないためには相手のジンクスがどういう力なのかを推理するのも重要で、そういうところは頭脳ゲーム的で楽しいですね。


そんな中、ひとり異彩を放っているのがヒロインにして「名探偵」こと鈴蘭。
蒼馬のことを容疑者に挙げつつも助手として用いる彼女は、ジンクス使いではないにも関わらず、独自の情報網で「毒りんご」に迫ってゆきます。
妹のために鈴蘭を利用しようと思って一緒に行動していたはずの蒼馬が、いつの間にか彼女のことも大事に思えてきて……という、スリリングな恋愛模様が良かったですね。
ラストの蒼馬の決断には結構グッときたのですが、あとがきの後のオマケの章が! この後味エグすぎでしょ!
果たしてこのキャラクターがどんな働きをしてくれるのやら、続きが大いに気になります。


イラストはニリツさん。こういうクレイジーな作品に本当によく合う絵柄ですよね。大好きです。
ラストの1枚とか、「ニヤッ」って感じの目元口元が怖すぎて夢に出そう。


きずなちゃんを推していきたい。