まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ザ・ブレイカーII 断罪の処刑人は唄う

ストーリー
世間から反感を買っているが罪に問われない人々を殺してまわる殺人鬼「公共の敵」。
残虐な処刑の様子をネット上でライブ放送するという異様な手口で、衆目を集めていく。
警察の手からも逃れる謎の凶悪犯に対し、悪魔と呼ばれた天才少年が再び送り込まれる……。



史上最悪の天才にして悪魔と呼ばれる少年が、情報機関・CIROの手駒として凶悪事件に立ち向かう頭脳バトルサスペンス第2弾。
今回の敵は、ネット上に動画を流しながら“社会悪”と見なした人々を殺していく残虐な殺人犯「公共の敵(パブリック・エネミー)」。
1巻に引き続き悪趣味な場面が連続して嫌な気分にさせられますが、確固たる信念を持った悪と悪の対決は見応えがありました。


カナタはルークと共に「公共の敵」に操られているならず者集団・血盟団にスパイとして潜入。
何人もの人々を殺している奴らの根城への潜入捜査です。正体がバレようものなら確実にただでは済まないはず、なのですが……。
いかなる窮地に立たされても、終始周りの奴らよりも“格上”といった様子で、余裕たっぷりの態度を崩さず、むしろ犯人たちを圧倒し続けるカナタさん。まさしく生粋の悪、毒を制する毒という感じで、やたら格好良く見えました。
目的のためなら手段を選ばず、人を傷つけること、殺すこともためらわない冷徹な主人公ですが、悪もここまで鋭いと魅力です。


そんなカナタの妹・リセは、プロファイラーとしてCIROの一員になりました。リセはカナタと一緒に戦いたい。でもカナタは。
なかなか気持ちを表に出してくれないカナタですが、リセへの冷たい台詞の端々から、彼女を心配してやまない愛情が感じられます。
基本殺伐とした物語なだけに、この兄妹の間に流れる絆には、心がほっこりと癒されますね。


最低最悪の犯人だったとはいえ、彼にちょっとだけ共感できるところもあって、やるせない事件でした。
事件自体は解決したものの、また謎がひとつ浮かび上がってきましたね。裏により大きな闇が潜んでいそうで、背すじが寒くなります。
エピローグが驚くほど和やかで、まるで予想外な終わり方だったので、次巻の展開が気になって仕方ないですね!
今度はどんな事件が起こるのか分かりませんが、カナタとリセの今後がどうなってゆくのか、幸せを祈りつつ見守っていきたいものです。


イラストはニリツさん。とにかくカナタが格好良く描かれていて素晴らしい。
カナタやルークのどこか壊れた表情にはゾクゾクくるものがありました。


イーグルアイちゃんを推していきたい。