まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ロクでなし魔術講師と禁忌教典

ストーリー
アルザーノ帝国魔術学校に新しく就任した非常勤講師・グレン=レーダス。
しかし彼は遅刻や自習、居眠りの常習犯で、真面目な生徒たちからすっかり呆れられていた。
そんな講師に本気でキレた生徒・システィーナ=フィーベルは、グレンに決闘を申し込むのだが……。



第26回ファンタジア大賞<大賞>受賞作品。
働く気がまるでない魔術学校のダメ講師が、少しずつ隠れた才能を明かしていく学園アクションファンタジー。
面白かったです! 選考委員の評にもあるように、魔術の講義シーンが特に素晴らしかったですね。
能ある鷹は爪を隠すを地で行く主人公の天才っぷり、その格好良さにゾクッときてしまいました。まあ、基本ダメ人間なのには変わりないんですけど!


主人公のグレンは、育ての親の大魔術師セリカの家でただ自堕落な生活を送っていた無職の青年です。
セリカによって無理やり魔術講師にさせられてからも、まるでやる気を起こさないし、へらへら笑ってばかりだし、周囲みんなをバカにするような言動ばかりする。
肝心の魔術の才能も、大魔術師の弟子ならさぞ……と思いきや、生徒が簡単にやってのける呪文の短縮詠唱さえできず、システィーナとの決闘にもあっさり負けちゃって、もうなんというか、本当にいいところのない「ロクでなし」でした。
でも、システィーナとルミア、ふたりの生徒によって「ちょっとだけ」やる気を出したグレンは、それまでのダメっぷりを補って余りある天才を魅せつけてくれます。
生徒たちが当たり前に信じていた「こういう魔術師は凄い、こういう魔術師はショボい」という価値観を丸ごと吹っ飛ばすようなグレンの授業は、作中一番のハイライトかもしれません。いやあ、ちゃんと魔術の授業の内容を描いてくれるファンタジー作品は大好物なんですよ!
人間的には相変わらず残念な感じなんですけれども、そんな部分さえ含めても、グレンという主人公が一気に魅力的になった瞬間でした。


中〜終盤にかけては、学校に忍び込んできた族とのバトルが繰り広げられます。
ここでさらに、対人戦闘での圧倒的な強さまでも披露してくれるグレン。悔しいことに格好良い!
決して魔術師としての純粋な才能に溢れているわけではありません。いわば魔術に関してとてつもなく“器用”なんだろうと思います。単純な力押しでなく、自らの長所を活かし、工夫を凝らして相手の度肝を抜く、こういう戦いぶりは好きですね。
何より、三流魔術師と侮られていたグレンが敵を打ち負かしていく様にスカッとします。ツンデレ生徒システィーナとの連携もあってニヤニヤさせてくれましたね。


呪わしい過去から脱却し、ようやく新たな一歩を踏み出すことになったグレン。
そんな彼と、ちょっと特別な生徒になりつつあるシスティーナとルミアの今後がどうなってゆくのか、とても楽しみです。
この世界の魔術の謎に迫っていくような展開も考えられますし、色々期待が高まりますね。早く続きが読みたい!


イラストは三嶋くろねさん。システィーナもルミアも可愛いですね。特にシスティーナの赤面にグッとくる。
キャラデザではセリカが好きです。最初のモノクロイラストの表情に惚れました。


次はセリカの本気も見てみたい。