まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

クレイジーハットは盗まない

クレイジーハットは盗まない (ガガガ文庫)

クレイジーハットは盗まない (ガガガ文庫)

ストーリー
“ヴィスク”と呼ばれる人形を盗む怪盗として名を馳せる《人喰い帽子》シャルル=クロウリー
ある日シャルルは、自分が出した覚えのない予告状がリオネ・ダユーという島に届いていることを知る。
従者でありパートナーの少女・アンティークを伴ってその島へと向かうシャルルだったが……。



第8回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>受賞作品。
元貴族のキザな怪盗が人形みたいな従者の少女と共に囚われの歌姫を盗みだすゴシックファンタジーアクション。
面白かったです! とにかく雰囲気がお洒落! やっぱり怪盗っていうのは、いつの時代になってもロマンのある響きですね。


山高帽、マント、ステッキ、キザったらしい口調、歯の浮くような口説き文句、そして幻惑の魔法。
“怪盗”というワードからすぐに連想されるような「いかにも」な怪盗っぷりが実に素敵。
まだ少年といっていい年齢ながら、とある目的を達するために、幼なじみでかつ従者の少女を引き連れて夜の街を飛ぶ怪盗シャルルは、とっても格好いい主人公でした。
従者アンティークがこれまた、たいへんに可愛らしいですね! 女性を見ればすぐに声をかけるシャルルのアホさにツッコミつつも、いつも隣にいて絶対に離れない安心感がいい。冷たいことを言ってるようで、実はシャルルを甘やかしまくっているところにもグッときます。
そうそう、バトルシーンではアンティークの活躍が際立っていましたね。いやあ、よく分かってる。やっぱりメイドというものは戦闘のプロでなくてはね!


シャルルとアンティークが赴いたのは、列車でしか入ることのできない、世間から隔絶されつつも謎の繁栄を遂げている孤島。
そんな島を舞台に暴れまわる、怪盗シャルルとその従者アンティーク、どこか怪しげな島の住人と支配者、そしてシャルルを追う騎士警察の少女ポシェット。
逃げて隠れて、時には切った貼ったの乱闘などもやりつつ島に隠された謎を解き明かしていく……そんなストーリーにワクワクさせられました。
ポシェットがまたいいキャラなんですよね。彼女は主人公を追いかける刑事役であると同時に、アンティークにも負けない可愛さを秘めたヒロインでもありました。こっちも幼なじみですしね。
囚われの歌姫メイツェルもなかなかどうして捨てがたい魅力を放つ少女でしたし、ヒロイン陣のレベルが全体的に高くて、目移りしてしまいました。


事件は幕を下ろしましたが、シャルルの目的が達成されるにはまだしばらくかかりそうです。
彼が敵に回しているものはあまりに大きくて、とても先が見えませんが……。数少ない信頼できる仲間たちと一緒に、いつか大願成就する日が来るといいですね。
アンティークとポシェット、ふたりのヒロインに挟まれて揺れる恋愛模様にも期待しています。次巻が楽しみです。


イラストはnyanyaさん。シャルルといいアンティークといい、衣装が印象的でよかったですね。
メイツェルのたくし上げはずるい。


この世界の貴族だったらコレクターになっちゃっている自信がある……。