まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

この恋と、その未来。 ―一年目 春―

ストーリー
超理不尽な三人の姉の下、不遇な家庭生活を過ごしてきた松永四郎。
その地獄から逃れるため、新設された全寮制の高校へと入学を決めた彼は、期待を胸に単身広島へ。
ところが寮のルームメイトとなった織田未来は、男性の心を持つ女性で……。



森橋ビンゴ先生の新作青春ストーリーと聞き、喜び勇んで手に取ったはいいものの。その中身は、性同一性障害の少女を好きになってしまった少年、という、かなり重めの設定のお話でした。
見事なストーリー展開と読みやすい文章に引っ張られてページをめくる手が止まらず、いつの間にか読み終わってしまっているくらい面白かったのですが……。
いやはや、参った。読後、舌にしつこく残るこのエグみをどうしたらいいのでしょう。あまりにハッピーエンドが見えなくて、頭を抱えてしまいます。


自分のことを男だと思っている少女と、ひとつ屋根の下で同居。何この状況、辛すぎるんですけど。
未来は周囲から男として接してほしいと思っているし、当然四郎は「同姓」だから、距離感も気兼ねなし。
一方四郎の方は、いくら頭でそう思おうとしても、やっぱり未来の容姿に気を取られてしまって、ちょっと触れただけでドキドキしてしまったり、ついつい未来の胸元に目が行ってしまったり。思春期真っ盛りの少年なんだから、当たり前ですよね。
でも未来に対してこんな風に考えてしまうということは、大切な友人である未来を嫌な気持ちにさせることだということも分かっているから、ああ。なんて厄介なの。


女の子に奥手な四郎に彼女を作ってやろうと画策する、プレイボーイな未来。
三好さんはとっても可愛いですね。小動物系のようでわりとまっすぐに好意を見せてくるところもいいし、なんといっても広島弁が最高にキュートでした。
このまま三好さんといい感じになってくれればいいのに。そうしたら、あれこれ悩むことなく、丸く収まってしまうのに、四郎はどうしてそう、いけない方へと向かっていってしまうのか。まあ、恋は理屈じゃないですよね。
ただ、未来にとっても四郎は、唯一秘密を知る人物という、特別な友人になりつつあるようです。どう考えても、そこから恋愛に発展するようなことはないような気がするのですが……。


まだふたりは出会ったばかりですが、早くも波乱の予感しかしません。今後の展開から目が離せませんね。
個人的には、三好さんのカムバックに期待しています! が、そうはならないんだろうな!


イラストはNardackさん。前作から引き続きのイラスト担当ですね。
透明感と色っぽさに満ちたこの表紙には、惚れぼれしてしまいます。


いやしかし、これは見ちゃうでしょ。胸……。