まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ロムニア帝国興亡記Ⅲ ―運命を別つ選択―

ストーリー
皇位を狙う群雄が並び立ち、分裂を始めるロムニア帝国。
わずかずつ勢力を拡大するサイファカールは、異民族3万による辺境への侵攻を受ける。
皇位継承戦と異民族侵攻をわずかな兵力で乗り切るため、策を巡らせるサイファカールだが……。



歴史書という観点から描かれるうつけ皇子の帝国統一戦記、第3弾。
前回ようやく次期皇帝への道の一歩を踏み出したサイファカールですが、休む暇などあるはずもなく。
たった5千の兵力と、有能な多くの部下たちをどう使って窮地を乗り越えるのか。本格的な戦に入る前で派手な見せ場は少ないものの、将としての真価が最も試される、「準備」の巻でした。


サイファカールとの比較目的で、他の陣営を少しづつ見せていくのが面白いですね。
どの群雄もそれなりの考えの下で動いているし、サイファカールよりも皇位に近い有利な立場にいることは確かで、でもどこかに、サイファカールに劣る部分がある。
皇女チチェリアーナや、将軍ビルダバルダスなどには、なかなかのカリスマ性を感じたりもするのですが……。いつかサイファカールと矛を交えることになるのでしょうか。


サイファカールの策の面白みは、なんといっても人使いの上手さにあると思います。
まだ3巻とはとても思えないほどの数の登場人物がいて、それぞれに得意な分野があって、その得意分野で巧みに仕事を割り振っていくさまは、まるでパズルを解いているかのよう。
時には自分の部下のみならず、他の将軍やその部下たちまでも自らの思惑通りに誘導して、使っていく。人の上に立つ者としての才能を感じさせる暗躍っぷりでした。
サイファカールがあまりに腹黒すぎて、彼に見事に騙されて本拠地を奪われたロキシーヌや、アル=アラの守備を任せられることになったドゥールドォール将軍が、だんだん哀れに見えてきますね……。


少しですが、サイファカールの優秀な部下たちの活躍も見られました。
個人的に注目したいのは、やっぱり、「見た目は幼女、膂力は化物」のリリィエンテルリオナーシュブラフィシュカちゃん! 毎度ながら長い!
会議の中ではいち早くサイファカールの真意に気付き、また馬に乗っては鬼のような戦いぶり。最初から付き従っているフレイヤなどよりもよほど目立つ八面六臂の活躍ぶりに胸が踊ります。何よりビジュアルがいいよね! 喋り方も好きです!
直臣組ではステラステラとネムネモが頑張っていました。本格的な戦いになりそうな次巻あたりでは、フレイヤやリ・インの活躍も見られるはず。
正直、全体的に直臣組よりもアル=アラ組の方が好きなんですけどね。そちらの中では、リリィはもちろんですが、ヨーコに期待しています。


ぶっちゃけどうでもいい侍女軍団をあえて口絵に持ってくるセンス。嫌いじゃない。