まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

絶対ナル孤独者1 ―咀嚼者 The Biter―

ストーリー
ニ○一九年八月、地球上のいくつかの都市部に落下した地球外有機生命体《サードアイ》。
それは、接触した人間たちに、現代科学では解明できない《力》を与えた。
サードアイに触れて《孤独》の力を得た十七歳の少年、空木ミノルは、望まぬ戦いに巻き込まれていく……。



川原礫先生の新作。突如異能に目覚めた人々がもがき苦しみながら戦うバトルアクションです。
前作、前々作と、遥か未来の世界を舞台とした物語を描いてきた川原先生ですが、今回は2019年ということで、わりと近い未来のお話でした。
主人公がかなり後ろ向き思考で、序盤から相当イライラさせられたけれども、バトルはさすがの迫力で、勢いがありましたね。


主人公のミノルは、とある理由から、できるだけ誰とも接することなく日々を過ごそうとする少年です。
このミノルときたら、いやもう、全っ然「主人公」気質じゃなくって、戦いどころか世の中の全てから逃げようとしているようにさえ見えました。
自分と、唯一家族として大切に思っている姉代わりの女性・典江さえ無事ならば、世界がどうなろうと関係ない、という感じ。
まあ、その理由となっているミノルの過去はなかなかに凄惨なもので、仕方のない部分もあるのですが……。どうしても、モヤっとしてしまいますね。
一方、今回の敵として登場した「バイター」は、非常にキャラクターが立っていて良かったです。
物を噛むことに対して異様なこだわりを持つ青年ならではの、異様な能力を用いた戦い方は圧巻でした。とても純粋な思いで平然と行われる悪は恐怖そのもので、知らず背すじが震えました。


周囲の干渉をとことん遮断するミノルの能力は、これまた「主人公」の力としてはだいぶ特殊なものに思えます。自分だけを守るだけならば実に強力ですよね。
でも今回の戦いの中で大きな一歩を踏み出したミノルには、これから守りたいものがどんどん増えていくことでしょう。
いざ他人を守るべき時が来た際に、自分しか守れない能力を持った彼がどのような戦いを見せてくれるのか、注目ですね。
イライラさせられることも多いけれど、後ろ向きでも必死に頑張る主人公の姿はいいものです。ミノルがどうやって過去の悪夢を乗り越えていくのか、興味深く見守っていきたいと思います。


イラストはシメジさん。口絵のバイターが夢に出てきそう(笑)。
ユミコの色んな表情が見てみたいので、次回に期待しています。


このエピローグには、ちょっとじんときちゃいました。