まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

蒼井葉留の正しい日本語

ストーリー
ライトノベル作家になるという夢を叶えるべく、高校進学と同時にひとり暮らしを決めた久坂縁。
新居となる「鳩居寮」で、彼は同じ新入生の少女・蒼井葉留と出会う。
パッと見は可憐な彼女、しかしその中身は「辞書」と「正しい日本語」を愛しすぎる変人だった……。



竹岡葉月先生の新作。あらすじとイラストに惹かれて手に取りました。
辞書オタクで日本語マニアのヒロインが、そのマニアっぷりを遺憾なく発揮して、学園のちょっとした問題を解決に導くラブ(?)コメディ。
面白かったです。ヒロインの葉留がかなり好みだったのと、ページをめくり終えて「いいもの読んだな」とほっとできる、素敵な読後感が魅力的なお話でした。


葉留は、引っ越し先の寮に、辞書を山のように持ち込んでくるほどの辞書マニア。
見た目は小柄でかわいらしく、言動も天然かつ小動物系なんですが、自分が好きな「日本語」のことについてはゴーイングマイウェイで、他の誰にも負ける気がしない、そんな面白みのあるヒロインでした。
なんといってもすごいのはその知識量ですね。ちょっと物思いにふけっているかと思ったら、口からはとある単語の意味や語源や使用例がすらすらと。個性豊かな寮のメンバーの中でも一際異彩を放つド変人。
でも困ったことにかわいい。日本語が好きすぎて、瞳をきらきらさせながら言葉への愛を語る彼女の姿は、まるで恋人を想う少女のごとくで、思わずきゅんときてしまいました。
一方、主人公の縁はライトノベル作家を目指す、ちょっと特殊な家庭環境を持った少年です。作中ではもっぱら、マイペースな葉留に振り回される役回りだったように思います。
自作の小説に出てくる奥義の名前に興味津々で突っ込まれる……なんていうのは、作家あるあるなのでしょうか。私の目から見ても、さすがにちょっとネーミングセンスがなさすぎるように思いましたが!
物語を書く少年と、言葉を愛する少女。ぴったりなようでいて結構デコボコなふたりの関係がどのように変わってゆくのかというのが、今後のストーリーの大きな肝になりそうですね。


その他の寮のメンバーとして、クールビューティーな寮長の椿先輩、ミステリーオタクのセーメー先輩、ギャルの円鹿先輩の3人が登場。
特に今回は、円鹿先輩の恋にまつわるエピソードがお話のメインになっていました。
普段の奔放な言動のせいで相手に気持ちが伝わらない彼女のため、葉留が提案したのは恋文作戦。
円鹿先輩のメールの文面を見る限りではラブレターはハードルが高すぎて、いったいどうなることかと思いましたが……彼女が書いた手紙には、自分でもちょっと意外なくらいじわっとくるものがありました。手紙っていいものだなあ。


それなりにドタバタした内容の1巻でしたが、実はまだ入学式の前なのですよね。
ということで本格的な学園ものは次回から。キャラクターもぐんと増えてくることでしょうし、縁と葉留がどのような学園生活を過ごすことになるのか、今から期待でいっぱいです。
今度はどんな日本語うんちくが飛び出してくるのでしょうか。楽しみ。


イラストはタケオカミホさん。竹岡葉月先生とは姉妹コンビでの著/絵だというのだから、まったく素晴らしい。
絵の魅力についてはもはや語るまでもありませんが、葉留の丸っこい顔つきがとても愛らしくてほっぺた落ちそうです。


序章のプリンの流れがたまらなく好き。