まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

白銀のソードブレイカー ―聖剣破壊の少女―

ストーリー
世界に七本しかない聖剣を持つ『剣聖』の一人・ユキノシタの警護を請け負った傭兵レベンス。
しかしある夜、彼らの前に、小柄な体格にそぐわぬ大剣を操る謎の少女が現れる。
少女はレベンスをあっさりと退け、無敗の剣聖をも討ち取って聖剣を強奪するのだが……。



小柄な少女エリザが大剣『処女神拷問(アイゼルネ)』を片手に、世界最強の7人の『剣聖』を倒して回るソードファンタジー。
作者は剣聖という言葉に思い入れがあるようですが、私も大好きです。しかしながら、この作品における主人公はその剣聖たちの敵。
圧倒的な武力を持つだけでなく、人々から慕われた剣聖たちの命を、無垢な少女が苦しみながらも奪っていく。迫力のバトルと剣士たちの切ない生き様を味わえる1冊でした。


今巻で描かれたのは、エリザが7人の剣聖のうちの4人を倒すまで。まあ最初の剣聖は序章の時点で倒されてしまったので、ちゃんと戦いが描かれたのは3人なのですが。
3人の剣聖はそれぞれ、国の英雄であったり、優しき指導者であったり、矜持に満ちた剣士であったりと、善悪でいうならば間違いなく善人と称されるだろう人間ばかり。
皆から愛されているのはもちろんのこと、彼女たちを倒そうとするエリザや、その協力者となったレベンスでさえも、惹かれずにはいられないような人柄の剣聖もいました。
しかし人柄に関係なく、エリザにはどうしても剣聖たちを討たなければならない理由があります。別に誰が悪いわけでもなく、ただ救いようのない未来を防ぐためだけに、心を押し殺して戦いに挑むエリザ。
避けようのない戦い、奪うしかない命。剣と剣、力と力のぶつかり合いはとてもワクワクするし格好良いのですが、その戦いの背景を思うと、どうにもやるせない気持ちにさせられるのでした。


キャラクターは皆魅力に溢れています。まずヒロインのエリザですが、この少女が剣聖と戦うだなんてとても思えないくらい、普段はぼやっとしていて、すぐに他人にだまされてしまう素直かつ迂闊な性格の持ち主。
しかしひとたび剣を握れば、剣聖に勝るとも劣らない戦いぶりを見せてくれます。大剣をぶん回す女の子はロマン!
そしてそのエリザに仇の手掛かりを見出して追いかけるのが主人公のレベンス。剣聖との戦いを除けばふたりでの旅ややりとりの場面が主となっています。
他人とできるだけ接しないように過ごしてきたエリザが、ずっと付きまとうレベンスにだんだん心を開くようになっていく姿に、胸が温まりました。エリザは小動物っぽくて可愛いですね。守りたくなっちゃう感じ。もちろん守る必要なんてまるでないくらいに強いんですけど……。
剣聖たちももちろん素敵でした。各章だけで退場してしまうのがもったいないくらいです。特にドラセナの最期には、ぐっと来てしまいましたね。


残る剣聖は3人。このペースでいくと、次巻で全員倒すことになりそうですが、さて。
エリザ自身にはまだ謎が多く、彼女が剣聖を狙うようになった経緯などはまだ明かされていません。それから、レベンスの仇のことも残っています。
剣聖殺しのことが明らかになり、世界の敵となったエリザですが、この哀しい旅の目標を達成することができるのでしょうか。次巻が楽しみでなりません。


イラストはファルまろさん。カラーイラストの色合いがまさにファンタジーという雰囲気で好きです。
あと3人の剣聖と、それぞれが持つ聖剣がどう描かれるのかにも期待ですね。


剣聖ひとりひとりの外伝が読みたい。