まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

魔王殺しと偽りの勇者2

ストーリー
《勇者候補》も残すところ、不死身と噂される《傭兵》と、かつて王宮に勤めていた《大魔導師》の二人。
すぐに行動を起こしたいエレインだったが、相変わらずユーサーの腰は重い。
しびれをきらしたエレインは、一人で《傭兵》ダリオンに会いに行くのだが……。



上下巻の下巻にして、「魔王殺し」の解決編。
1巻でふたりから話を聞いてその嘘を見破ったので、残りふたりに対してもそんな調子で淡々と進むのかなと思いきや、上手いこと変化球でかき回してくれました。
エレインの振り回されっぷりは相変わらずでしたが、最後にはしっかり成長を見せてくれたのでよかったです。


調査を進めぬままのんびり生活を楽しむユーサーさま。だらけてますね。
せっかくの外の世界を満喫したいという考えなんでしょうが、今回ばかりはエレインの方に理があります。彼のやっていることはただのサボりですから。
ただ、ひとりでダリオンのところに行ってしまったのは、さすがの猪突猛進っぷりというかなんというか。毎回反省はしているのに、こういうところはなかなか直ってくれません。まあそんなところも彼女の魅力なんですけど。
もちろんだめなところばかりではありません。推論という面だけでいえば、今回のエレインは先入観少なく、わりと論理的な考え方ができていたのではないでしょうか。
ユーサーも何度か驚いていましたが、彼とともに任務を続ける中で、間違いなく大きな成長を遂げていますね。


一度全員から話を聞いてそれぞれの嘘を暴いたのに勇者が誰か分からないという展開は、予想の範疇ではあったものの上手いなあと思いました。
物語の焦点も、これまではずっと4人の勇者候補のうち誰が大魔王を倒したのかということでしたが、次第に「大魔王とは何か」「魔族とは何か」という方向に移っていきます。
勇者候補の話と、それからユーサーが少しずつこぼすヒントから、少しずつ明らかになっていく魔族に隠された謎。
大魔王殺しの顛末と、魔族の謎と。それらを全て知った上で、自らの正義感のもとに、国王や国の重鎮たちの前でエレインが述べた「真実」は、エレインの確かな成長ぶりを実感させてくれるものでした。ちゃんと主人公らしく、格好良く決めてくれましたね。
そして、終章の最後の最後。ハッと額を打ちたくなる、気持ちのいい1行でした。お見事。
あとがきによれば続きが出るかどうかは決まっていないとのことですが、もう少しこの凸凹コンビの行く末を見たいし、何よりこの世界でのファンタジー+ミステリーをもっと読みたいので、続いてくれるといいなと思います。


リーンはレギュラーキャラになってほしい。