まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

機巧少女は傷つかない0 Facing "Shadow Moon"

ストーリー
一族の復讐を果たすため、相棒の自動人形・夜々と厳しい修練を積む駆け出しの人形使い赤羽雷真。
そんなある日、仇である天全の居場所が、英国、ヴァルプルギス王立機巧学院と判明する。
日本軍が学院へ送り込むという密偵になるべく、雷真と夜々は陸軍榊学校、通称・監獄島に向かうが……。



アニメBD/DVD第1巻についてくる特典小説です。普段は読みたいと思いつつも手を出せないことが多いのですが、今回ばかりは大好きな作品の、しかも本編1巻に直接つながる前日譚が、なんと文庫1冊分のボリュームでついてくるということで、買わざるを得ませんでした。ええ、踊らされてますね。悔しいです。
さらに悔しいことに、これがまた素晴らしく楽しかった! 普通に刊行しないのが理解しがたいくらいに面白かったし、盛り上がったし、雷真と夜々を語る上でたいへん重要なエピソードになっていました。
今こそ、改めて、声高らかに叫びたい。夜々かわいいよ夜々と!


舞台は日本。前に本編で描かれたふたりの出会いから少し経った、夜々が雷真の相棒となってまだ間もない頃。
機巧学院への密偵の座を雷真が得るまでの、監獄島での訓練の日々と軍の内紛から巻き起こった事件の顛末を描いたお話です。
どうして雷真が密偵に選ばれたのかということは、そういえば今まで語られたことがありませんでしたね。
その他にも、榊中将と雷真のやりとりや、まだ夜々とのコンビネーションが出来上がっていない少し未熟な戦闘シーン、そして花柳斎人形<朧富士>など、今につながる場面が目白押しでとても興味深い内容でした。
まあ、雷真の鈍感は今も昔も変わらぬようでしたが。汐のこととかね、さすがに気付けよと思いました。なんでそこだけ成長しなかったんだ……。


雷真に心を許しつつあるものの、まだ気持ちを素直に飲み込むことができず、雷真への想いと人形であることの負い目との間で揺れ動く夜々。
今の愛情表現過多な夜々も最強に可愛いけれど、まだデレきっていない、憎まれ口を叩きながらも内心ドッキドキな夜々もめちゃくちゃ可愛かったです!
どうしても一歩を踏み出すことができなかった夜々が、とある人から助言をもらって、ついに素直なことばをぶつけることができた場面もまた素晴らしかったですね。焦りまくっている雷真の姿が新鮮で、初々しさにきゅんきゅんしてしまいました。


硝子やいろりたちはもちろん、汐や間宮、るりといったゲストキャラも魅力たっぷりでしたね。
本人は登場しなかったものの、ちょこちょこ「いざなぎの姫」の話が出てきたのにもニヤニヤしました。<雪月花>もそうですが、知っているキャラがどれだけ凄いのかということを、外部の噂のような形で描かれると、妙に誇らしい気分になりますね。
いやはや、この1冊を読んだ上でシリーズを全部再読したくなるような、実に罪作りな特典小説でした。とりあえず夜々と雷真の過去話が描かれている6巻だけは、読み返したいですね。もちろん、本編の続きの方も大いに楽しみです。


ツンデレいろり姉さんの過去話はもっともっと読みたいですね……!