まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

穢れ聖者のエク・セ・レスタ

ストーリー
無双の兵器「輅機」を駆使するフィガロ魔皇国によって祖国を滅ぼされた亡国の皇子シリュウ
リュウは魔皇国皇帝の義理の息子とされ、侵略戦争の最前線に立たされながらも、一切の戦功を認められない不遇の日々を送る。
そんなシリュウの復讐の野望を見抜いたのは、“聖女”と称えられる義妹エトラで……。



第9回MF文庫Jライトノベル新人賞<審査員特別賞>受賞作品。
皇帝への復讐の野望を秘めた皇子が、同じ願いを持つ皇女と出会い、反逆の狼煙を上げる、血と陰謀のボーイ・ミーツ・ガール。
面白かったです! というかめちゃくちゃ好みでした! 周りじゅう敵しかいない状況で遂げられる復讐の緊張とカタルシスが素晴らしいですね。
主人公のセリフや地の文がやたら芝居がかっていて体が痒くなりそうなんですが、そこがまた妙にハマっていてよかったです。


メインヒロインのエトラがとてもいいキャラしてました。いや、ここはあえてエトラ様とお呼びしたい。
初めこそ聖女なんて呼ばれていて、誰からも冷たく扱われているシリュウに対しても親身になってくれる天使のような女の子だったのですが、その真の顔はまさに悪女。
最初は色気で釣っておいて脅迫・取引にかかるとか最高にゾクゾクします。見た目の幼さも相まって色んな意味で危ない女に見える。いやまあ実際に危ないんですけど。クーデター? テロ? の首謀者なわけだし。
その一方で、余裕たっぷりのように見えて実は切羽詰まっていたり、色仕掛けを恥ずかしがっていたりする部分もあって、可愛らしいところはちゃんと可愛らしいからずるい。
リュウとの間で交わされる気取ったやりとりもいい。似たもの同士のコンビだと思います。
それから、約慕も心憎いですよね。戦うためにキスをするなんてのは、昔からあるベッタベタな設定でしょうが、そのベタさがやっぱり好き。


出世の手段を持たないシリュウと、戦う力を持たないエトラ。同じ野望を持ちながらもそうできない理由がある両者が出会って、全てが始まる展開がとても気持ちいい。
今回の目標となるディーヴァはシリュウの直属の上司にして第5皇女という超大物。地位はもちろん、輅機の操る能力も高く、とても真っ向勝負で打ち負かすことのできる相手ではありません。
正道でだめなら、からめ手から。友軍、敵軍、そして自分の体まで、今自分が動かせるものを最大限に使ってディーヴァの隙を突く。
最初にしては大きすぎる壁のようにも思えたんですけどね。いざ復讐が始まってからの勢いはなかなかに凄くて、手に汗握ります。
もちろん、そういった裏のこそこそした戦いだけではなくて、大事な場面ではシリュウがしっかりヒーローしているし、輅機を使った派手なバトルもあるので、陰謀とバトルアクションと、両面で楽しむことができました。


リュウとエトラの戦いはまだ始まったばかり。ラスボスの皇帝がちょっと恐ろしすぎるんですが、いつか復讐を果たすことができるのでしょうか。
皇帝や食わせ者っぽい第3皇子ゼウルがどう絡んでくるのか、そして何より、兄妹の関係の移り変わりが気になるところですね。ライバルはまず現れないと思いますけど……。
ともあれ、ひとまずは次の巻ですよ! 早く読みたい。楽しみです。


イラストはminoaさん。エトラ様の目つきがエロくて素晴らしい。
2枚ほどあった見開きイラストが印象的で素敵ですね。


フィガロエルヴェってなんか口に出したくなる。