まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

引きこもりたちに俺の青春が翻弄されている

ストーリー
小学生の時、いじめられっ子の蒼衣春哉は、『凶鳥』の異名で恐れられる美少女・瑞鳥紫羽に助けられた。
彼女の隣に並びたいと願い、努力を続ける春哉だったが、自身の転校によって離れ離れになってしまう。
高校生になり、故郷へ戻って紫羽と再会を果たす春哉だが、彼女は重度の引きこもりになっていて……。



一迅社文庫New Generation Award2012<大賞>受賞作品。
いじめられっ子だった少年と、かつて彼を救いながら今は引きこもりになってしまった少女とのが織りなす、不器用な青春ストーリー。
面白かったです! 帯でも盛大に煽られていましたが、とにかくヒロインが魅力的な作品でした。
ギャグも面白くて読みやすかったし、紫羽が引きこもりから脱却していく物語の流れも綺麗だったと思います。


上にも書いたように、メインヒロイン・紫羽がとても可愛い!
小学生の頃、凶暴で何でもできる超人で、孤高の存在として君臨していた紫羽。そんな彼女と6年ぶりに再会してみたら、ゴミっための部屋で黙々とエロゲーに勤しむ残念美少女に。当時の偉ぶった様子は欠片もなくて、むしろ口を開けば卑屈な自虐かエロネタというひどさです。
昔の紫羽に憧れてずっと自分を磨き上げてきた春哉が、彼女をなんとかしようと思うのは当然のことだったでしょう。
初めは、すっかり見違えた春哉のことを遠ざけて関わろうとしない紫羽。でも春哉が毎日毎日通ううちに、少しずつ心を開いて、話なんかもするようになっていきます。
子どもの頃の絆をゆっくり取り戻していくかのようなふたりの関わりがとても素敵でした。紫羽は春哉だから会うことを許したわけで、最初から特別な相手ではあったのだけれど、その特別がどんどん大きくなっていくのが読んでいて分かって、きゅんきゅんさせられました。
自分がかなりモテていることにも気付かず、紫羽のことだけ一途に追いかける春哉がまた格好良いんですよね。自分を責め続ける紫羽を包み込むような大物感といい、これは落ちますわ。仕方ない。イケメンだけど認めるしかありません。


第二の引きこもりにして中二病少女の田中、何かと型破りだけれど生徒思いの美人教師犬養先生、子犬めいた後輩の葦原さん。
紫羽の他にも個性的なキャラが揃っていて、どんどん賑やかになっていくのが楽しい。そしてやっぱり紫羽が可愛い。吹っ切れた紫羽さんのエロ妄想最高です。本人がいる横で色々口に出しちゃうの凄い。紫羽さんほんと春哉大好きだな!
妄想の暴走はともかく、外の世界に踏み出した紫羽が春哉以外の友達を作っていく姿には胸がほっこりしました。紫羽と田中は、なんだかんだでいいコンビになりそうな気がします。
このまま楽しいコメディで行くのかな、なんて油断していたら、少々ドキッとする展開が待ち受けていて驚かされました。でも最終的には温かい結末を迎えることができて良かったです。
いやあ、最初から最後まで安定して楽しめる作品でした。続刊もあるとのことですから、次巻を楽しみに待とうと思います。


イラストはのんさん。女の子の柔らかさが存分に表された絵柄が好みでした。
紫羽のビジュアルも最高。ううむ、可愛い。


正直、小学3年生のあだ名が『凶鳥』っていうのは無理があるような……。