MONSTER DAYS

MONSTER DAYS (MF文庫J)

ストーリー
1200年前世界に魔物が出現して以来、多くの戦いと犠牲を経て、人間と魔物は何とか共存するに至った。
人魔調停局のライル・アングレーは、未だ軋轢が耐えない人魔間の平和を維持する為、今日も事件の対応に追われている。
外部魔物集落【竜羽の里】の使者を護衛することとなったライルだが、護衛対象は幼い竜族のお姫様で……。


第9回MF文庫Jライトノベル新人賞＜最優秀賞＞受賞作品。
人間と魔物が共存する世界で紡がれる、銃と魔法の現代ファンタジーバトルアクション。
面白かったです！　刑事もののような現代ドラマの部分と、魔物や魔法といったファンタジーの部分が見事なバランス感覚でドッキングされていました。
魅力たっぷりのキャラクター陣、迫力のバトル描写、きっちりまとめ上げられた展開。ボリューム感もあり、たいへん読み応えのあるお話だったと思います。新人賞としてはかなり完成度の高い作品ではないでしょうか。


人間たちと人間に化けた魔物たちが一緒に働く職場・人魔調停局が楽しい。
主人公のライルは人間ですが、人化した一角獣やキマイラといったメンバーと共に、人と魔物の間に起こる事件を捜査したり、時に戦闘員として介入したり。
魔物の特徴である強靭な肉体や、それぞれの魔物に特有の魔法に対抗するため、非力な人間ながらに武装を整え、魔具と呼ばれる道具を使って簡単な魔法を使えるようにして、凶悪な事件に立ち向かうライルが格好良かったですね。
そんなライルが護衛することになる竜族の姫君・クーベルネ。ヒロインと呼ぶには少々幼すぎる彼女は、天真爛漫でピュア、まさにお子様！　といった感じの女の子です。しかしその一方で姫であり人質であるという自らの立場をよく知っていて、不意に見せる達観したような態度は普段の子どもらしさとかけ離れています。
いたいけな少女にそんな顔をさせておいていいのか。いやいいはずがない。
自らも未熟ながら、ひとりの「大人」としてクーベルネに寄り添おうとするライルの心意気がとても素敵でした。
他の登場人物の中では、なんといってもライルの相棒役・一角獣アルミスがいいキャラしてましたね！
見た目は年上の清楚なお姉さまといった風なのに、中身は若い女の子大好きのド変態。さすがは乙女しか背に乗せないと言われる一角獣ですね。
普段ライルには悪口ばかりだけれど、根は優しいし、いざというとき頼りになる相棒の姿を見せてくれるのには胸が熱くなります。


次々に襲い来る魔物たち、そして予想外の敵。暗躍する情報総局。
追い詰められつつも、クーベルネを守るためにがむしゃらに戦うライルとアルミス。そしてそれを後押しする調停局の皆。
大いに燃える展開でした。あのオッサンとかね、ずるいですよね。分かっててもグッと来ちゃうもんね。
お話の決着は綺麗についていますが、まだまだ楽しませてくれそうな設定ですし、続きがぜひ読みたいです。出てくれるといいな。


イラストは天野英さん。日常ではクールな、バトルでは熱量を感じる絵柄で魅せてくれました。
マンティコアは夢に出そう。あとロイヤーさんの溢れる胡散臭さがちょっと好きです。


結局サンダーボウって何さ。