まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ドレスの武器商人と戦華の国

ドレスの武器商人と戦華の国 (富士見ファンタジア文庫)

ドレスの武器商人と戦華の国 (富士見ファンタジア文庫)

ストーリー
エイジャ王家のひとつアンザで発見された鉱脈の利権をめぐり争う二つの国、キルガとリクレア。
両軍がぶつかり合う戦場の真ん中に、突如白いドレスの少女が舞い降りる。
セイジアと名乗った少女は彼らに<封隕武器>を売りつけにきたと言うが……。



作者の前作が印象的だったので手に取ってみました。戦乱の中対立する両国にどんどん武器を売りつけていく謎の武器商人の少女と、武器が嫌いなのに少女の護衛をしている剣士の少年の物語です。
ファンタジーとしては今まであまり見たことのないヒロイン設定で新鮮でしたね。武器商人って。
剣でも魔法でもなく商売で戦を動かそうとするヒロインと、彼女にやり込められる周囲という構図が面白い作品でした。


何よりまずヒロイン・セイジアが魅力的ですね。
武器商人としての冷徹・沈着な顔と、普段の無邪気で幼稚な顔。まるで二重人格で、どちらが彼女の本当の顔なのかも定かではない状態。
性格だけでなく言動も周囲からは飛び抜けていて何を考えているのやらよく分からないし、なんともつかみどころのないキャラだと思います。
しかしそのミステリアスさが独特の色気を醸し出していて実に良いのですね。次に何をしでかしてくれるのか予想がつかないから、行動ひとつひとつにドキドキさせられました。
あ、もちろん個人的には無邪気モードの方が好きです。ただただ可愛い。
一方の主人公(と呼ぶには違和感バリバリですが)・トーマは、なんというかひたすらセイジアに振り回されていただけだったという印象。
セイジアの企みにもまるで気付かなくて、勝手に勘違いして勝手に怒るわからず屋で、格好良い部分よりも間抜けな部分の方が目立っていたような気がします。
ただ、自分の信条よりもセイジアを守るということを優先して動く姿はちょっと良かったですね。お姫様を守る騎士みたいな感じで。
ストーリー上戦闘があまり重要でなかったせいで活躍の場が少なかったのですが、今後はきっと活躍してくれるだろうと思いたい。


セイジアの思惑通りに高価な武器をどんどん買わされていくキルガとリクレアの両国。
争う双方に武器を売りまくるセイジアの行動がどんな展開へとつながっていくのかが気になって、中盤からはひと息に読んでしまいました。
そんなに何もかも都合良く行くかしらとか、伝説の武器のわりにはだいぶ数があるんですねとか、首をひねるところもまあ結構あったんですけど。それはそれ。
とりあえず今回の戦争は一段落ということで、次巻ではまた新たな商売を見せてくれるんでしょうが、セイジアの立場や仲間たちについてなどまだまだ残された謎が多いので、そのあたりについても描いてくれると嬉しいですね。


イラストは坂本みねぢさん。赤白のよく映える表紙はインパクトがあって目を引きますね。
表と裏のセイジアの描き分けが面白かったです。


マリィさん……可愛いのに……。