まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

強くないままニューゲーム Stage1 ―怪獣物語―

ストーリー
昼休み前の授業中、突然現れた巨大怪獣に踏み潰されてしまった藤。
直後藤は、謎のカウントダウン表示とコンティニュー選択の画面が視界に現れるのを見る。
『Yes』の表示を選び顔を上げると、昼休み前の教室に戻っており……。



入間先生と植田さんのコンビで新作! これは読むしかない! ということで手に取りました。
面白かった! 巨大怪獣に潰されて生き返ってを繰り返しつつ、たったふたりで怪獣とのゲームに打ち勝つ方法を模索していく展開にハラハラドキドキしました。
ページ数で見ると薄めなのに読み応えがあって、読後の満足感も高かったです。


平凡な日常の一幕から、何の説明もないまま唐突に、リアルの世界で怪獣と戦う(?)ことになった主人公・藤とヒロイン・敷島。
怪獣に潰されてはコンティニュー、また潰されてはコンティニュー、の流れで、序盤しばらくは進んでいきます。
どうやらゲームのようなものらしいとは気付きつつも、攻略法が示されているわけでもなく、怪獣を倒す武器が用意されているわけでもなく、そもそもクリア条件さえ分からないという五里霧中の状態。
もちろんゲームとはいえ現実世界(たぶん)ですから、藤も敷島もただの高校生で、挑戦を繰り返すからといって経験値が溜まりレベルが上がるわけでもなく、怪獣と真正面からぶつかって勝てるわけもありません。
でもそんな中で彼らは、とりあえず逃げられるだけ逃げてみたり、怪獣を観察してみたり、学校にある道具を使ってみたりと、お互いにアイディアを出しあいながらちょっとずつちょっとずつ攻略の手掛かりをつかんでいくのです。
この試行錯誤の過程が本当に楽しい。自分でやりたいとは思いませんけれども!
特に、コンティニューしてから怪獣が出現するまでの10分の壁を乗り越えたところでは心の中で拍手喝采でしたね。人間の知恵って素晴らしい。


メインの登場キャラは藤と敷島、そしてもうひとりのヒロイン・山崎の3人。
プレイヤーである藤&敷島は当然ながら、意外と重要な役割を果たしてくれたのが山崎ですね。
怪獣が襲ってくるということを知らないのに攻略の役に立ちまくりなこの行動力は凄い。頭がちょっと、いやだいぶ、抜けてるというかぶっ飛んでるような気がしますけどそこもまたよし。可愛いは正義ですな。
後半に来て明らかになってくる、藤と敷島の怪獣攻略法の違いも興味深い。今後はこの違いが物語のキーポイントになってきそうな予感がします。
てっきりこの巻は怪獣だけで終わりかと思いきや、お話は二重三重に思わぬ展開を見せてくれているので、続きがたいへん気になるところ。次巻が待ち遠しいですね。


イラストは植田亮さん。毎度言っている気がしますけど大好きなイラストレーターさんです。
シンプルに可愛いながらもちょっと儚げな絵柄とか、カラー塗りのツヤとか、好きなところはいっぱいあるんですが、特に目の描き方が好みなのです。眼力を感じるんですよね。引きつけられる。


怪獣のイラストがないのでスケール感がいまいち分からないけれど、想像をかきたてる意味ではこれで正解かも。