まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

クライシス・ギア 緋剣のエージェント・九重 慎

ストーリー
「クライシス・ギア」を武器化する才能を持つ高校生・九重慎。
政府機関「特防」に所属する彼の元に、財閥令嬢である緋扇紗々良の身辺警護依頼が舞い込む。
何か裏があることを感じつつも、警護任務に勤しむ慎だったが……。



人間を守るための「クライシス・ギア」なる発明品が溢れた世界で、「特防」に所属する主人公が「クライシス・ウェポン」を用いる凶悪犯罪者と戦っていくバトルアクション。
ううむ、こうして文字に起こしてみると設定だらけでとっつきにくそうですね。実際に読んでみるとそんなこともなく、スピード感のある展開とバトル描写に引っ張られて一気に読むことができました。面白かったです。


主人公の慎はとある目的のために特防に入って金稼ぎをしている少年。
厭世的で面倒くさがり、人を傷つけるのにもためらいなしと、序盤のうちは正直あんまり好きになれないキャラでした。
しかし不器用な少年はヒロインとの出会いによって変わるものであります。これはもう運命というもの。そうあるべきもの。
慎が護衛対象であるヒロイン・紗々良と巡りあい、彼女とのやりとりの中でだんだん彼の人間らしい一面が見えてくるのが微笑ましい。
たこ紗々良という少女が実によいヒロインなのですね!
深窓の令嬢であるからか世に擦れておらず、純粋でまっすぐで素直。「守ってあげたい!」と思わせる可愛らしさのある女の子でした。お姫様役にぴったり。
あと丁寧語ね。やっぱりお嬢様キャラの最大の魅力は丁寧語だと思うのですよ。たまりませんです。はい。
一方、もうひとりのヒロイン・霞耶もなかなかおいしいキャラでした。
それほど出番が多かったわけではありませんが、幼なじみである慎との間の並々ならぬ関係がうかがえて思わずニヤニヤ。
紗々良が「守るべきひと」なら、霞耶は「帰るべき場所」。そんな印象を持ちますね。


上にも書いたように、物語の展開とバトルの描写、両方にスピード感があってよかったです。
「えっ?」というような急展開があって次に何が起こるのか予測できず、終始緊張させられました。
敵が圧倒的に強かったのも大きいですね。主人公が勝つのか負けるのか、紗々良を守りぬくことができるのか。ギリギリのバトルに手に汗握ります。
今回、戦いの面でも精神的な面でも成長を遂げた慎ですが、上には上がいるこの世界。少しだけ顔を見せたあの男と、将来戦うようなこともあるのでしょうか。
紗々良との間のことやクライシス・ギアのことなど、謎もいくつか残されています。紗々良の笑顔を守るため、次巻ではどのような戦いへと身を投じていくことになるのか。楽しみですね。


イラストは白井鋭利さん。シュッとして格好良い絵柄が作品にぴったりだと思います。
表紙が格好良い! そして紗々良が可愛い! 紗々良をもっと頼む!


しかし「防御専門のはずなのに攻撃にも使えちゃった」とか……とんでもない欠陥品である。