まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

機巧少女は傷つかない11 Facing "Doll''s Master"

ストーリー
<金薔薇>アストリッドたちの学院襲撃を受け、金剛力の魔術回路を消失、重篤の危機に陥った夜々。
唯一夜々を修復できるはずの硝子を探す雷真だが、肝心の行方は分からぬまま。
一方、度重なる不祥事で学院の権威は失墜、各国から夜会のやり直しの声が上がり始め……。



カバー袖の著者近影を見た時点でうっすら予感はしていましたが、歯ぎしりするほど焦れったい巻でした。
ああ、上下巻ってやつは! これだから上下巻ってやつは!
最初から最後まで夜々が倒れたままっていうだけでもう辛すぎる。早く元気な夜々が見たくてたまらないのでとっとと11巻の方をよろしくお願いします。


雷真にあれこれ苦言を呈しながらも、ずっと彼の味方だった硝子。
そんな硝子が離れてしまった途端にこれなのですから、今までどれだけ雷真が彼女に頼っていたのかということが分かります。
硝子がいなければ夜々は直せず、夜々がいなければ雷真は何もできず。ひとりで空回りや無茶を繰り返す雷真の姿がどこか寂しい。
その一方、これまで雷真と夜々に助けられてきた人々はその恩返しとばかりにそれぞれ力を発揮。
主人公たちのかつてない窮地に仲間がこぞって助けようとしてくれる展開には、思わず胸が熱くなりますね。
中でも圧倒的に格好良いのはやっぱり師匠グリゼルダでしょうか。バカ弟子のピンチに颯爽と駆けつけるこのヒーローぶりがたまりません。グリゼルダは登場以来ずっといい立ち位置を確保していてずるいと思います。
イオネラの再登場も嬉しかったです。まさにメインキャラ大集合といったこの豪華さ、さすがは上下巻。


シャルとアリスのコンビも迫力があったし、フレイとロキは相変わらず雷真大好き姉弟でした。まったく雷真も夜々もいい仲間に恵まれたものです。
しかしそんなキャラたちの頑張りがあっても、夜々が、そして学院が置かれた悲惨な状況を覆すまでには至らず。
肝心の雷真はといえば、またひとりで勝手に突っ走っちゃって事態を大きくする始末。
もちろんこれもひとえに夜々への愛のためですから一概に責めることもできないのですが、つくづく自分を悪い方悪い方へと追いやるのが好きな主人公だと、変に感心してしまいます。
八方塞がりな現状がとても苦しい。今はただ夜々の笑顔が見たい。それだけです。次巻が本当に待ち遠しいですね。


花柳斎が作った人形はこんなのばっかりか。