まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンⅢ

ストーリー
アラファトラ山脈でアルデラ神軍の大軍の向かい合う、疲労困憊の帝国軍。
帝国軍の撤退支援部隊として、イクタたちは六百人でアルデラ神軍一万二千を足止めすることに。
ところがアルデラ神軍の中にも、『不眠の輝将』として名を馳せる天才がいて……。



天才・イクタにライバル・ジャンが登場! いいですよね。ライバル。
戦士と戦士のライバル関係も熱いけれど、軍師と軍師もそれに負けず劣らずの熱さ。お互いに知略を尽くして相手の裏をかく頭脳と頭脳の勝負に知らずテンションが上がってきます。敵同士でありながら、戦いの中で顔も見ぬ相手のことを知っていくとか、もう最高。
二章のタイトルにもあるように「常怠vs不眠」という対立的なキャラ設定になっているのがまた素晴らしい。同じ智将であっても戦いに向かうスタンスや考え方が全然違っていたり、逆に妙に似通った部分もあったりで、ふたりを比べているだけで楽しくなってきます。
大軍を少人数で足止めするロマン。限られた人数と地形条件をうまく運用して確実に時間を稼いでいくイクタさん、お見事です。
しかし絶対的な人数差と、敵に『不眠の輝将』がいるということが、安心する暇を与えてくれません。
こういう計略家同士の争いにおける「意味が分からない相手の行動」の不安感って凄いですよね。逆に謎めいたイクタの行動にはほっとするんですが。なんか後出しジャンケンみたい。


イクタ以外の騎士団メンバーももちろん大活躍でした。
部隊に残ることを決めたマシューとハロ、格好良かったですね。特にマシューは、周囲との才能の差を感じながらも必死で食らいついていこうとする姿に熱くさせられます。イクタとの友情も素敵。
トルウェイはイクタから与えられた重要任務をきっちりとこなしきってみせるさすがの優秀さでした。ほんと、イクタは才能だけでなく仲間にも恵まれていますよね。
でも誰より素晴らしかったのはやっぱりヤトリですね! なんなんでしょうね、この圧倒的なオーラは。
イクタとのやりとりの節々から、このふたりの間にある誰も入り込めない絆のようなものが垣間見えて、なぜか胸がきゅっと締め付けられました。
「ヒロイン」っぽいのはどちらかと言うとシャミーユ殿下の方なんですが、イクタの隣にいつまでも立っていてほしいのはやっぱりヤトリだよなと思います。


2巻から続いた地獄のような戦いもようやく一段落。次に彼らを待ち受けるのはどんな試練でしょうか。
戦いの描写も楽しいし、わくわくすることは確かなんですが、この辺でちょっとひと休みしてもらいたいような気もしますね。
イクタたちだけでなく、ジャン一行の動向も気になるところ。ああ、次巻が待ち遠しい。


まさかナナクにもフラグ構築済みだったとは……。イクタさん抜け目なさすぎる。