まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

聖剣の姫と神盟騎士団Ⅰ

ストーリー
無敵の傭兵騎士団“聖剣団”が守るラグナの谷へと侵攻したカーラーン国。
カーラーン軍に所属するお調子者の魔道士ダークは、戦場で若き女剣士フィーネに打ち倒される。
ダークは彼女によって無理やり団員にさせられてしまうのだが……。



魔道士の少年と少女剣士が出逢い、崩壊した騎士団を立て直していくファンタジー。
ナンバリングで分かるとおり続刊前提のお話で、物語としてはまだ序盤もいいところなんですが、楽しく読めました。


まず真っ先に目に付くのが少年ダークの小物っぷり。文中で何度も「小悪党」という表現が用いられていますが、まさしくそんな感じの主人公でした。
魔法の腕も大したことないのに無駄に自信たっぷりだし、手のひら返し激しいし、基本的にセコい。
主人公なんだからきっとどこか格好良いところがあるはずだと思っていたのに、読み終わっても「はて? そんなところあったかな?」と首をかしげてしまうくらい、格好悪い部分ばかりが目立っていた気がします。
でも、そんなキャラなのにどこか憎めないのは、せせこましい生き方に人間味が溢れているからでしょうか。
思えば、この物語にはすでに「英雄」がたくさんいますよね。それはもうたくさん。既に7人くらいいます。
そんな英雄で溢れた物語の中で、こんな、お世辞にも格好良いとは言えない主人公が、裏ワザっぽいやり方を使いつつ大きなことを成し遂げるというところに、この物語の面白みがあるのではないかと思います。


フィーネは色々とおいしいキャラですね。聖剣をふるい、ひとりで敵をばったばったとなぎ倒す美少女剣士。これをロマンと呼ばずして何をロマンと呼びましょう。
崇高な目的と騎士道に溢れた精神、静かな物腰。どれをとってもダークとは対照的なヒロインです。
よりによってどうしてダークみたいなのを選んじゃったのか(一応理由が語られていたとはいえ)、まったくもって謎なんですが、結果的にそれでいい方向に向かっているのだから、運命というのは不思議なものですね。
情け容赦なく心臓に剣を埋め込む冷徹な戦士の姿と、健啖ぶりを無言で頬を染めて恥じらう姿とのギャップが実に可愛らしい。
現状、ダークと恋仲になるようなことはまずなさそうに思えますが、何かの間違いが起こらないとも限らないので、注意深く見守っていきたいものです。


今回はゲルウィンで、次回はラッセルですか。巻ごとに英雄ひとりを仲間にしていくということでしょうか。それだと最低でも7巻は続くことになるんですが。
だいぶ先の長い物語になりそうですが、巻を追うにつれてストーリーの壮大さも増していく予感がします。
ダークの知略もまだまだ本領ではなさそうですし、さらなる驚きをもたらしてくれることに期待しつつ、次巻を待つとしましょう。楽しみ。


イラストはNidy-2D-さん。英雄たちを描いた口絵の1枚を見て、一気に物語への期待感が高まりました。
フィーネの戦闘シーンなども格好良かったです。モノクロイラストはちょっと色が薄いようにも思いますが。


<水霊王女>スィーの出番が待ち遠しい。