まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

クロス×レガリア 死神の花嫁

ストーリー
「もう一人の鬼仙兵器」ウーとの戦いに突如介入してきた「殺し屋」灰岡ジン。
馳郎の幼なじみである彼は、実は白翁の後継者候補でもあったのだという衝撃的な事実を一同に語る。
ウーとジンの戦闘能力に為す術なく逃げ出す馳郎たちだったが……。



馳郎×ナタと対照的なコンビ、ジン×ウーとのバトルを1冊使って描いた巻でした。
戦い方はそっくりなのに性格や信念が全然違う彼らは、まさにライバルキャラそのもの。絶対に負けられない相手との戦いという感じで、燃える内容でしたね。
これまでと最も違うのは、相手も<カエアン>と同じ人工知能を持っているということです。
ただの人間の馳郎が鬼仙たちとの戦いで優位を保てていたのは、ひたすら<カエアン>のサポートと白翁の権力があるからこそだったと思うのですが、今回の敵ジンには<ツール>があり、白翁の権限も多くを奪われてしまいました。
同じ鬼仙兵器、同じ科学の力。ならばその勝敗を決定づけるのは、いったい何になるのでしょうか。


当たり前のように周りを破壊し、殺し合った相手と恋に落ちるジンは、色んな意味で壊れているキャラです。
しかしそれはある意味で、馳郎以上に確かな自分を持っているということでもあります。
ジンの吹っ切れた信念に対して、馳郎の「千円ボディガード」という信念が立ち向かえるのかどうかという点が、大きな焦点となりました。
正直、ジンの強烈な個性に比べると、馳郎にはそこまで特別なものを感じません。そんな相手を前にして、自分の思いがどこまで通用するのかということを確かめるという意味で、馳郎にとっても、いい成長の機会になったのではないかと思います。他を犠牲にしても、守りたいものを、つまりナタを、守ることができるのか。


<カエアン>がとにかく素晴らしかったですね。<ツール>にしてやられて、主を傷つけてしまったことがよほど辛かったのだろうと思います。
人工知能ではありますが、やはり誰よりも馳郎の相棒にふさわしい。開発者であるリコとのやりとりには胸が熱くなりました。
もちろんリコ自身や、蓮花や少影、そしてナタといった仲間たちの活躍ぶりも目ざましいものでしたね。
特に蓮花と少影は思わぬ方面で頑張ってくれていて嬉しくなりました。なんか好きなんですよね。このふたり。


またひとつ戦いを乗り越え、馳郎とナタの関係も少し進んだ様子が見られました。
その一方で悩ましい気持ちに気付いてしまった少女がもうひとり。ああ、切ない。
バトルだけでなく、馳郎をめぐる人々の思いの移り変わりにも、注目していきたいところです。


ピンナップの蓮花さんの指に引っかかっている黒いもの……とても、とても気になります!