まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

月花の歌姫と魔技の王

月花の歌姫と魔技の王 (HJ文庫)

月花の歌姫と魔技の王 (HJ文庫)

ストーリー
技術革命を生んだ「最後の魔女」の弟子にして、魔法と科学双方の力を持つ天才少年ライル。
彼は祭りの見世物小屋で、魔法時代の象徴「幻想種」の少女ルーナリアと出会う。
貴族たちから彼女を守るため、幼なじみのマリーアの手を借りて、少女の身柄を引き取ったライルだったが……。



「面白いよ!」との評判を散々聞かされていたので手に取りました。
魔法が衰退し、科学が進歩を遂げつつある世界に生きる天才少年が、ふたりの女の子に振り回されるお話。
はい、たいへん面白かったです! 魔法と科学のなんちゃらというのは、わりとありふれたテーマのように思えますが、その両方に精通した主人公というのが新鮮でいいですね。


《夜闇の血族》の姫ルーナリアと、新興貴族の令嬢マリーアのダブルヒロイン攻勢。
それぞれ魔法と科学を代表するような立場にある両者が、ライルを挟んでいるという形です。
性格や見た目、戦い方までが対照的で、上手いこと設定したものだと思いました。ヒロインの魅力が見事に拮抗しています。せっかくダブルヒロインにするならば、やっぱり最後までどちらとくっつくか分からないくらいが面白いですからね。
とはいえ、やはり読者にも好みというものがあるもので、個人的にはルーナリア推しです。はかなげで、いかにも薄幸の少女という感じなのですが、何もかもを諦めたような彼女がだんだんと心の氷を溶かしていく様子にきゅんとしました。平然を装って掃除をしつつも耳を染める姿、素晴らしかったです。あと丁寧語ね。丁寧語は最高の萌えのひとつだと思います。
一方で幼なじみ・貴族令嬢・お色気等々の武器を持つマリーアもなかなか捨てがたい。ライルの前では艶っぽく余裕たっぷりに迫りながらも、実は裏でめちゃくちゃ照れていたり、他の女にライルを取られないかと心配でしょうがなかったりするあたりがとても微笑ましいですね。
そしてこの両者をつなぐのが破格の天才ライルさん。パッと見冴えない眼鏡少年という感じですが、ところどころでその天才ぶりを垣間見せてくれます。
天才なのに全然嫌味っぽいところがないのがずるい。そりゃモテますわ。そして妬まれますわ。
自分で自分の優しさを偽善と言い切っちゃうところなんか、いかにも分かったような態度で下手したら嫌われそうなものですが、それでもあまり嫌な感じがしないのは人柄によるものでしょうか。
ただ、女心をまったく理解していないところは文句を付けるに値しますね! これは確かに苦労するな、マリーアさん……。


ルーナリアとマリーアの友情おいしいです! 友人にしてライバルの関係、熱いですね!
まだまだ本気を出したようには見えないライルさん。彼の前には多くの選択肢が用意されています。
世界を変えるのか変えないのか。魔法と科学どちらを選ぶのか、もしくは両方? そしてルーナリアとマリーアは? ううん気になる。
ライルが本領を発揮していくにつれて、物語がどんどん盛り上がっていくことは間違いありません。次巻もすぐに読みたいと思います。


イラストは大場陽炎さん。モノクロページの少し古めかしい雰囲気がお話によく合っていますね。
扉絵のマリーア嬢には思わず唸ってしまいました。特定の部位についつい視線が。


手品のタネをバラすのはマナー違反です。良い子はまねしないでね。