まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

インテリぶる推理少女とハメたいせんせい -In terrible silly show,Jawed at hermitlike SENSEI-

ストーリー
人間は無作為にテキトウに動くのだ、と主張する「せんせい」。
故郷の島に戻り中学校の文芸部顧問に就任した彼は、この世の全てが理屈通りに動いている、と信じて疑わない文学少女に出会う。
彼女「比良坂れい」は、「せんせい」のとある過去に大きく関わっていたらしく……。



第6回HJ文庫大賞<奨励賞>受賞作品。
受賞前からとんでもなくぶっ飛んだタイトルで話題になっていた作品です。改題後の今のタイトルもなかなかのもんですが、さすがに原題はここには書けません。
タイトルに一本釣りされた感は否めないけれど、それ以上にイラストとあらすじの雰囲気がかなり好みだったので手に取ってみました。読んで驚きました。
てっきり、タイトルにこれ見よがしに含まれている直球の下ネタは、内容に引っ掛けたダジャレか何かで、お話のテーマはまた別の物なのだと信じて疑っていなかったのですが……。お話のテーマ、ド直球でそっち方面でした。というかまんまタイトルどおりでした。せんせいが中学生にアレコレ「している」のです。
凄い。何が凄いってHJ文庫が凄い。帯のやりとりが本当にあったのなら、<編集A>さんには純粋に拍手を贈りたい。
ちなみに今のタイトルの英語部分は、日本語部分に音を合わせて適当に単語を並べただけかと思いきや、訳しても見事に意味が通っているようです。ううむ、おみそれしました。


さて内容の方ですが、たぶん、ミステリというくくりでいいのではないかと思います。
語り手は「せんせい」で、ずっと彼の一人称で話が進むのですが、何と言えばいいのか。非常に難解でした。読み終えてしばらく経った今も、頭が疑問符で埋まっています。
せんせいと比良坂さんというわけの分からないキャラふたりが、論理なんだか屁理屈なんだかよく分からない論戦を延々と続けるのですが、あまりにやりとりが多すぎて、今何の話をしているのか、どの謎を解こうとしているのか、理解が追いつかないのです。いや、少なくとも私の理解力では、一度読んだだけでは無理でした。
ひとつひとつの理屈は、なんとなく飲み込めても、前後のつながりが分からなかったり、解決編だと思っていたものが一気になかったことにされたりと、混乱に次ぐ混乱で目が回ります。最初から最後まで、せんせいと比良坂さんに翻弄されっぱなしでした。
はっきり言って読みにくいのですが、しかし、この独特のテンポに慣れていくうちに、翻弄されるのが楽しくなってくるから不思議なものです。
特に終盤の、ミステリの古典的なトリックを逆手に取ったようなネタの応酬は見事でしたね。もう少しミステリに詳しかったらさらに楽しめたのかな。


色モノに見せかけた推理小説に見せかけた恋愛小説に見せかけた別の何か。うん、そんな感じでしたね。
結局このエンディングは、何らかの解決をもたらすものだったのでしょうか? はて、何度最終ページを見なおしても、よく分かりません。
もう一度初めから読み返してみたいですね。何か発見があるかもしれません。無いかもしれないけれど。あと、作中でネタになっているミステリを読んでみたいなと思いました。
色んな意味で問題作だとは思いますが、この頭のモヤモヤを含め、なんだかんだで楽しかったので釣られて良かったです。比良坂さんは狂気可愛かった(新語)ですしね。
もし次回作のようなものがあるなら、また手を出してみようかな。


イラストは和遥キナさん。「前髪ぱっつん黒髪ロングストレート」素晴らしいと思います!
よく見ると、表紙で比良坂さんが読んでる本のタイトルは今作の原題ですね。裏表紙のマーク自重しろ。


表紙の材質が他作品と違ってサラサラしているのはあれですか、女子中学生の肌触りの再現ですか。