まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

暗号少女が解読できない

暗号少女が解読できない (集英社スーパーダッシュ文庫)

暗号少女が解読できない (集英社スーパーダッシュ文庫)

ストーリー
転校早々、自己紹介で大失敗をし、クラスで孤立してしまった西村。
孤独と戦う彼に唯一話しかけてくれたのは、学校でも有名な美少女・沢渡遙だった。
そんな美少女からの突然の呼び出しを受け、期待に胸を膨らませて屋上へ赴く西村だったが……。



第11回スーパーダッシュ小説新人賞<大賞>受賞作品。
記憶力だけが取り柄の少年・西村と、暗号が好きな美少女・沢渡さんが織り成す、謎×ラブコメディ。
興味を持ちつつもタイミングがなく読めずにいたのですが、ようやく手に取ることができました。読んですぐ後悔しました。なんでもっと早くに読まなかったのかと! いやはや、さすがは大賞作といいますか……実に面白かったです。
元々こういった、暗号やパズルなどというギミックを用いた作品には弱いんですが、今作はそれだけで終わらずに、ギャグではしっかり笑わせてくれ、謎に包まれたヒロイン沢渡さんの魅力も丁寧に描かれており、まずラブコメとして素晴らしいお話になっていました。
ギミックにこだわりすぎて内容を疎かにしてしまうことなく、ラブコメとしての立場をきちんと確立した上で、ギミックを利用しているという印象です。ミステリーなどにも言えることですが、これは結構大切なことだと思うのですよ。


何よりもまず、沢渡遙というキャラクターの魅力値が凄まじいですね。
沢渡さん謎可愛い! 沢渡さんナチュラルエロい! 沢渡さんに散々おちょくられた挙句にあの魔性の笑みで地獄に突き落とされたい!
思春期男子にとっての「女の子は理解できない生き物」というイメージをとある方向にどんどん膨らませた結果がこれですよ。
何を考えているのか分からない女の子に振り回されたい願望、あると思います。ありませんか。少なくとも私にはあります。
基本、彼女の行動の意図はつかめないことが多いのですが、岡目八目のことば通り、読者視点だと時折その中に本心がちらっと垣間見えることがあって、きゅんときてしまいます。そりゃ西村じゃなくても悶々としちゃうというものです。まったくたまらんですな。


肝心の暗号ですが、ある程度考えれば私でも解けそうな、易しめのものがほとんどだったように思います。なんとなく読みながらでも解けてしまったものもいくつかありました。まあ、いくら沢渡さんとはいえ、女子高生が考えた(という設定の)ものですからね。
難易度はともかく、暗号としての中身はしっかりしていましたし、ちょっとしたパズル感覚でも楽しめるのではないでしょうか。
細かいところを言いますと、与えられたヒントだけでは読者からは解けない問題(つまり主人公自身の知識が必要な問題)などもありました。
ただ、上にも書いたように、この作品にとっての暗号はあくまでギミックに過ぎません。肝心なのは、この暗号の裏に隠された沢渡さんの意図であり、そこから生まれる物語なのです。最大の謎は常に沢渡さん本人です。ああ、暗号少女が解読できない。


各章ごとのどんでん返しや伏線回収もお見事でした。特に最終章は、この巻全体におけるちょっとした違和感を綺麗にまとめてくれましたね。
どうやら続きも出てくれるようです。沢渡さんの他にも、野々崎さん、チコ、和希といったクセのあるキャラたちのことが結構気になっているので、続巻では脇役にももっとスポットライトが当たってくれるといいなと思います。
でもやっぱり、まずは西村と沢渡さんのことですよね。少しは進展しているのかな。楽しみです。


イラストはぐらしおんさん。パンツのレースにこだわりを感じました!
あとはあれだ。脱ぎかけっていいよね。


あとがきにまで暗号を仕込むサービス精神、素敵です。そして賞金の使い道も素敵。