まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

煉獄姫 六幕

煉獄姫 六幕 (電撃文庫)

煉獄姫 六幕 (電撃文庫)

ストーリー
すべてを喪いながらも命を取り留め、キリエの介抱によって目覚めたフォグ。
アルトを取り戻すため、城へ突入しようとしたふたりの元に、『レキュリィの宴』からの連絡が届く。
カルブルックに誘われ、フォグたちはレキュリィの屋敷の開かずの間へと向かうが……。



予告通りの最終巻でした。最後にふさわしい、素晴らしい盛り上がりでしたね。
前巻でのバッドエンド直行ぶりが尋常ではなかったのですが、今回はそんなどん底からの巻き返し劇。
どんなハッピーエンドを迎えようとも、あの人やあの人はもう帰ってきませんし、心から手放しで喜べる終わりとはなりません。絶望が大きいほど最後の幸せも大きいというわけではないのですよね。残念ながらね。
でも、少なくともフォグやアルトを取り巻く一部の人々にとっては、未来のある、そして救いのあるエンディングになってくれたと思います。


力を奪われた主人公が強大な敵に勝つためにはどうすればよいのか。そんなの決まってます。新たな力を得ればよいのです!
ということで、ある意味で『消失点』を超える力を手に入れたフォグ。天堂騎士の頃の戦い方も良かったけれど、やっぱり煉術は派手でいいですね。
これがまた下手するとアルトのお株を奪ってしまいそうなほどに圧倒的で、なんというかローレンさんはやっぱり天才中の天才だったのですねと。ただのマッドサイエンティストではなかったということでひとつ。
ローレンといえば、彼の真の意図が分かったこともあり、最終巻にしてようやく、彼の本当の人柄やその凄さが明らかにされましたね。
1巻で名前の出た重罪人たち(もはや懐かしい)の中でも、やはり飛び抜けた才能の持ち主だったのでしょう。なんてったってフォグやキリエたちの父親なのですから。
別に生みの親がどんな人間でも関係ないじゃないかと思っていたけれど、今となっては、『ローレンの雛』がユヴィオールの主張するような悲劇の子たちでなくて本当に良かった。あのキリエの涙が見られましたから。


ラストバトルは熱かった。アイリス&イオ、カルブルック、そしてキリエと、残された数少ない精鋭が、それぞれの戦いを繰り広げてくれました。
中でもやっぱり、キリエは特別でしたね。ずっとアルトやフォグと敵対し続けてきた彼女がそのふたりを助けるために動くなんて、初めの頃は予想だにしませんでしたが。
アルトの親友、そしてフォグの妹として、『群体』の力を失いながらも立派に戦い抜いたキリエには大きな拍手を贈りたい。アルト&フォグがこの作品の表の主人公ならば、裏の主人公は間違いなく彼女でした。
それから、ああ、ユヴィオールは最後まで徹底した悪役ぶりでしたね。ティ・キとの連携の取れた戦い方までが実に小憎らしい。
主人公にぶっ飛ばされる役としては、これ以上ないタレントの持ち主だったと思います。別に褒めてません。奴がやってきたことを考えると、全く同情の余地はありませんからね!


物語は終わりました。まだ解決していない問題も山積みですが、とりあえず一段落というところでしょうか。
理不尽で非情なフォグたちの世界では、何もかも都合良くはいかないかもしれません。それでも、アルトは笑顔です。今はそれでいいのだと思います。近いうちに、彼女をさらに笑顔にする出逢いも待ち受けていそうですしね。
基本的に悲劇が好きじゃない私が、何度も落ち込まされながらも、最後まで楽しくワクワクしながら読むことのできたお話でした。
終わってみれば清々しい気分に包まれていて少し不思議です。巻末のkaya8さんの挨拶イラストのおかげかもしれませんね。
この作品が読めて良かった。フォグやアルトたちの未来にたくさんの幸せがありますように。次回作も楽しみにしています。


最後は気取らない章タイトルで。ううむ、やられた。