まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

竜と勇者と可愛げのない私8

竜と勇者と可愛げのない私8 (電撃文庫)

竜と勇者と可愛げのない私8 (電撃文庫)

ストーリー
互いの使命と意地を賭け、死闘を繰り広げる魔王メイ=ヘムと竜騎士レックス。
そこに突然、レックスの曽祖父レイジャックの姿をした竜王シグルドが姿を現す。
圧倒的な竜王の力を前に、為す術なく追い詰められるアンジュたちだったが……。



店頭で真っ先に手に取って、思わず「ほぅ」とため息をついてしまった、淋しい淋しい最終巻。ページを早くめくりたいような、めくりたくないような、妙な気分でした。
遂にここまでやってきてしまったのですね。表紙のアンジュのやわらかな笑顔も、どこか切なく見えてきます。
大団円を迎えることができるというのは、物語として幸せなことだとは思うのですが、やっぱりお別れは悲しいものですね。愛着のある作品の最終巻を手にするたびに、しみじみと感じます。


アンジュとレックスのあまりのバカップルぶりにすっかり当てられてしまいました。ニヤニヤもある程度を超えると疲れてくるものらしい。
世界が危機に瀕しているというにも関わらず、このふたりときたら、全力でイチャイチャにかかっております。それも人前で! 実にけしからん! けしからんですよ!
まあ、前巻でやっとくっつくまで、ずいぶんと長いことかかりましたからね。あの卑屈だったアンジュが遂に愛を手に入れることができたんですからね。そりゃもちろん私としても、祝福する気持ちでいっぱいなのです。そのはずなのです。
なのに、何なんでしょう、この胸にくすぶるもやもや感は! くそっ! 何が「ここから先の描写は」ですか! ちくしょう!
それにしても、愛するパートナーのフラグ管理までしっかりしているアンジュさんはヒロインの鏡。レックスは本当に幸せものですよ……。アンジュを泣かせたら絶対に許さない!


最終決戦は、案の定といいますか、竜王との戦いになりました。
世界の守護者と戦う理由なんて簡単なものですね。一緒にいたいから、ただそれだけでよかったのです。天秤にかける必要さえありません。
ちょっと無責任にさえ思えるほどに、強い気持ちで結ばれたレックスとアンジュには、またも軽く嫉妬してしまいました。
肝心の戦いですが、正直どう見ても魔王の方がオーラがあったので、アンジュとレックス、そしてトモエさんならば、勝てないなどとはちっとも思いませんでした。むしろ、アンジュの命がどうなってしまうのかというあたりでドキドキさせられましたね。
命を削る魔法。2巻からずっと使い続けてきたツケが、ここにきて回ってくることになって、もう駄目かと思ったときに……。
ああ、ここでそう繋がってくるのかと。あのイチャイチャにもちゃんと意味はあったのですね。色々な意味を込めて、おめでとう。
それから、忘れてはいけないのがレイヴェンとアイカのこと。最後の最後になるまで影に徹して、ようやく思いを遂げることになったレイヴェンには惜しみのない拍手を贈りたい。このふたりの関係もとても素敵ですよね。彼らの行く先に少しでも幸せがありますように。


幸せいっぱいの後日談。とっても彼ららしい、ほのぼのしたやりとりに思わず頬が緩みます。
物語を支えてきたたくさんの登場人物たち。どうしているのか、分かる人も分からない人もいるけれど、きっといつかまた会える。
彼らのお話はまたここから始まるのだと思わせてくれる、明るい未来が感じられる心地の良い終わりでした。
これまで8巻。それほど長くない付き合いでしたが、温かい気持ちをいっぱい伝えてくれた、大好きな物語でした。
そうそう、それまで知らなかったそばかす美少女の魅力にも気付かせてもらいました! ありがとうございました。次回作も楽しみにしています。


レミエルの伝説の方は書籍化されないのでしょうか? 密かにずっと待っているのだけれど。