まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

さくら荘のペットな彼女8

ストーリー
ましろと七海、二人から告白されてしまい、修学旅行が終わるまでに返事を伝えると約束する空太。
しかし結局気持ちを決められないまま、北海道への修学旅行の日を迎えてしまう。
クラスメイトの繭とやよいの策略で、七海と二人で札幌市内を回ることになった空太だが……。



三角関係、ここに決着。
いつか来る、いつか来るとは思っていましたが、とうとうこの時がやって来てしまいました。
前回ラストで空太への想いを伝えたましろと七海。残すところは空太の決断のみ。
空太が、ましろを選ぶのか、七海を選ぶのか、それともどちらも選ばないのか。この巻は、つまるところ、ほぼそれだけを描いた1冊だったと思います。


前半は驚くほどに七海のターンでした。いやほんと、ましろさんはどこへ行ってしまったのという感じ。
基本的にましろ派の私には、大変読み進めるのが辛い内容になっておりました。
落ち着いて客観的に見てみれば、そりゃあ七海にも可愛いところがたくさんあるんですが、やっぱり、空太が七海を選ぼうとしているんじゃないのかと思わせられるたびに、気分がずしんと沈むんですよね。これはもう、ましろを好きになってしまった以上、仕方のないことですよね。
今までの流れから考えて、なんだかんだ言っても、ましろの方が超優勢だろうと高をくくっていたわけですよ。
ところがこの土壇場になって、こんな風にぐらぐらしやがるんですからね。どんだけやきもきさせれば気が済むのかと。正直、千尋に対しては「ずいぶんと余計なことをしてくれたな」という気持ちでいっぱいでした。
千尋に関しては、そもそもキャラ自体が好きじゃないんですけれどね。なんというか、普段があまりに適当なのに、重要な場面だけしゃしゃり出てきて「いいこと言った」風を醸し出していくのにイラッとさせられます。今回もなんだかんだで重要な役どころを与えられていたようですが。
一方で、助言者としての美咲はさすがの格好良さでしたね! 小難しいことをあれこれ並べ立てるのも結構だけれど、ただ単純に、これだけで十分だったのではと思います。恋愛の真理のひとつではないでしょうか。


ましろと、普通の彼氏彼女のごとく付き合うビジョンが湧いてこないというのは、なんとなく理解できます。
憧れと恋を履き違えていたのじゃないかという気付きも、それはそれで立派なものでしょう。
でも、こちらからしてみれば、そんなもの失点になどなりはしない。ビジョンが湧かないなら見えない未来をわくわくしながら進めばいいし、憧れだろうがなんだろうが、惹かれていたことに違いなんてない。
と、それくらい簡単に割り切れてしまえば、空太はもっとずっと楽に生きられるんでしょうが、こいつはどうにも、あれこれ頭で考えすぎるきらいがありますよね。
女の子に返事をするために自分の未来まで考えるのは偉いとは思うけれど、相手にとってはだいぶ重いような気もします。まあ、ましろと七海なら気にしないでしょうが。素敵なヒロインに囲まれて幸せだな。まったく。
空太がひとりで悩むのは勝手しろってなもんですが、デートのときのましろはあまりに可哀想で見ていられませんでした。
傷付けたくないから決断を伸ばして、それで傷付けてるんだから目も当てられない。ああ、なんて面倒くさいんだ。青春ってやつは。


今回の空太にはさんざんじれったさを感じさせられましたが、色んな助けをもらいつつも、なんとか決断することができてよかったと思います。
もし私が七海派だったら、あとがきの味もだいぶ違ったのでしょうか。どちらにしろ、ただ甘いだけの後味ではありませんけれども。
ましろと七海についてばかり書いてきましたが、他のキャラについてひと言加えておくならば、栞奈はもしかしたら、一番切ない立ち位置かもしれません。ましろや七海と違って、土俵にさえ上がっていないのですから。
ただ彼女に関しては、伊織と幸せになってくれることだけをひたすらに願っているので、早く気付いてくれたらいいなと思います。
あと2冊で完結だそうです。気になるところは、後輩たちのことを除けば、龍之介のエピソードくらいですか。
アニメも順調のようですし、この勢いのまま、最後まで駆け抜けてもらいたいものですね。


第四章初めの蛍光灯の描写がなんか好き。