まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

アニソンの神様

アニソンの神様 (このライトノベルがすごい! 文庫)

アニソンの神様 (このライトノベルがすごい! 文庫)

ストーリー
アニソン好きが高じて、ドイツから日本へとやってきた少女、エヴァ
彼女の夢は、アニソンの聖地・日本でアニソンバンドを組むことだった。
バンドメンバーを探して校内を歩き回っていたエヴァは、ひとりの男子生徒に出会い……。



知り合いがみんな面白いと口を揃えていた今作。だいぶ遅れましたが、ようやく読むことができました。
前作のイメージからはガラリと変わって、明るくポップな学園青春ストーリーになっています。
何より特筆すべきは、実在するアニソンの曲名がいくつも作中に登場することですね。
その曲を知っているかいないかで、楽しさが相当変わってきそうですけれども、私の場合は幸いなことに、ほとんど知っている曲ばかりだったので、大いに楽しむことができました。とはいっても有名曲ばかりですから、ある程度アニメを見ていたり、アニソンを聴いていたりする人なら、大抵は問題なく読めるのではないかと思います。
各章タイトルがもうアニソンの曲名になっているので、目次を見ているだけでテンションが上がってきてしまいますね!
人のふんどしで相撲をとっている感もありますが、それで上手い相撲が見られるなら、こちらとしては何も言うことなどありません。


主人公はドイツからの留学生、エヴァ・ワグナー。この少女がドイツからやってくるところから物語が始まるわけですけれども、これがまた実に好ましい子なのですね。
まっすぐで純粋で、素直で頑張り屋さんで、そして健気。こういう主人公は大好きです。つい応援したくなる。
いきなりやってきてアニソン愛を語りだして学校中を引っかき回していくなんて、普通だったら痛々しかったり、敬遠されたりしそうなもんですけれども、エヴァくらいまっすぐだとあっさり受け入れられるから、不思議なものです。
大好きなものに向かってまっしぐらな彼女の姿はとても眩しくて、変に格好つけたり斜に構えたりするのがばからしくなってくるんですよね。
エヴァと対になるもうひとりの主人公が、まさにそういったところのあるギター少年・入谷。
アニソンへの偏見を持っていたはずの彼ですが、いつの間にかアニソンのことが気になりだして、次第に興味を持つようになります。これもエヴァの魔法のひとつかもしれませんね。
音楽に対して熱心すぎて、誰とも一緒にバンドを組むことができなかった入谷の心を、エヴァが少しずつ溶かしていく様子に心が温まりました。


バンドものの華といえば、やはりライブシーン。文化祭でエヴァたちが演奏した曲目は、そりゃあこれなら盛り上がるよなあという3本で、私も脳内で再生しながら、アニソンの熱に浸っておりました。
特にトリの1曲は、これはもう卑怯だよというレベルの超有名曲で、しかも歌詞までしっかり作中に描かれていて、読んでいて胸が踊りましたね。
しかし、自分の知っている曲が文章で描かれるというのはなんとも不思議な感覚でした。目で追いかけている文章に合わせて、頭の中で流すメロディーを変えていく必要があるので、これは結構コツがいるかもしれません。
そんな細かいことを考えずにガーッと読んでしまうのが一番気持ちいいと思いますけどね!
エヴァという素敵な主人公に引っ張られて、アニソンの魅力をまたひとつ見出すことのできる作品でした。
どうやら続編もありそうな雰囲気ですから、次に何の曲が登場するのか予想しつつ、カラオケでアニソン歌いつつ、出るのを待つことにしたいと思います。


イラストはのんさん。アニメタッチの絵柄はそのまま映像にしてしまえそう。
入谷の目つきの悪さが好きです。


このラノ文庫スペシャルブログに掲載されている掌編もオススメ。