まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

織田信奈の野望9

織田信奈の野望 9 (GA文庫)

織田信奈の野望 9 (GA文庫)

ストーリー
重い病で倒れた竹中半兵衛と、宇喜多直家に捕らえられた黒田官兵衛
二大軍師不在の良晴軍団は、大軍の毛利家を前に窮地に立たされていた。
一方大和では、信奈と信頼関係で結ばれていたはずの松永久秀が突如謀反を起こして……。



ああ、面白かった! あまりにも見所が多すぎて、何を書いたらいいのか分からないくらいです。
頼りにしていた半兵衛と官兵衛もおらず、信奈は京で陰謀に巻き込まれ、他の家臣団も各地方に散らばっていて助けが来る気配もない。
しかしそんな全滅必至の状況でも、全部の実を拾おうとするのが良晴という人物でした。
もちろんひとりでできることには限りがあるから、借りられる力はとことん借りて、ひとつずつピンチを切り抜けていく姿に、思わず手に汗を握ります。
ただ、守り抜いたものの陰には失ったものもたくさんあって、戦国時代に生きる人々の無常を、改めてひしひしと感じました。


今回は、本当にどのキャラにも見せ場がありました。あの金ヶ崎に匹敵するくらいの大一番と言っても過言ではないと思います。
中でも嬉しい誤算は義元さんですね! ここに来てそんな格好良いところを見せるなんてずるいじゃないですか。ただのお飾り将軍じゃなかったんですか。
信奈の周辺にとぐろを巻いていた陰謀はとても深くて、悪役がまた腹立たしいほど見事な悪役ぶりで、なかなか抜け出せそうには見えなかったのだけれど、それをビンタ一発で解決しちゃう義元さん超輝いてる。良晴でさえ成し得なかったことを、まさか彼女がねえ。
こうなると、良晴が義元の命を助けたことも、巡り巡って信奈のためになっていたのかなと、そんな風に思えてきます。
官兵衛救出作戦では、良晴はもとより、鹿之介や前鬼の活躍が素晴らしかったです。
鹿之介と良晴の間、そして前鬼と良晴の間に、それぞれいつの間にか築かれていた固い絆。胸が熱くなりました。
鹿之介の「殿」にもじんと来るものがありますが、良晴への呼びかけ方でいうなら、何より前鬼ですよね。このツンデレさんめ。イケメンすぎるんですよ、もう……。
また、助け出される立場の官兵衛も、牢の中で良晴のことをずっと信じ続けていました。良晴軍団、いいなあ。どこを見ても絆と信頼の塊ですよ。きっと主の軍団に似たんですね。
この巻における表の主人公が相良良晴ならば、裏の主人公は間違いなく松永久秀でした。
あまりにも突然で、不可解な謀反に隠された彼女の真意。もたらしたものはあまりに大きく、自分の評判や立場をよく理解した上で実行に移したその手腕は、ただただ、見事のひと言でした。
やり方に関してだけは、信奈の気持ちを考えると、諸手を上げて歓迎というわけにはいきませんけれども、戦国随一の悪人の呼び名にふさわしい、最高の輝きを見せてくれたと思います。
それから、久秀の元へ走る道中で、利休が妙な活躍をしていましたね。あんた茶人でしょうに。
しかもやたら格好良い呪文付きですよ。これが全部アニメ声なんだと思うと、それはそれでまたテンションが上がるわけですが!
利休が秀吉付きの茶人だったことは有名な話ですけれど、もしかしてこれからは良晴の元で、一風変わった戦いを見せてくれるんですかね。官兵衛と一緒に。ちょっと楽しみ。


長秀さん。勝家。犬千代。一益ちゃん。信澄。十兵衛ちゃん。広大な織田家領地の中に散らばっていた織田家の家臣たち。
お互いに遠く離れていても、信奈を助けるという思いはひとつ。それぞれに信奈との過去を思い返しながら京へと向かう皆の信奈への思いに、知らず心が温かくなりました。
そして集まってきた軍勢をまとめ上げるは、我らが天下一の姫であります。
いやあ、もうですね。あのイラストですよ。あのイラストに全て持っていかれました。
8巻からほぼ良晴軍団だけで話が進んでいて、大いに楽しみながらもやっぱりどこか物足りなさがあっただけに、ここで一気に皆が、というのには、もう興奮せざるを得ません。
特に右端の一益ちゃんがあまりに素敵すぎて震える。強力な水軍を持つ毛利家との戦いでは、きっと彼女こそが大きな切り札となってくれることでしょうね。
最後にきちんと、信奈とのいちゃいちゃも用意されていて大満足でした。うんうん、これがないと。シリアス一辺倒では疲れてしまいますからね。
さて、強敵は未だ健在ですが、織田軍の一同が揃った今、そして良晴軍団にあのふたりが舞い戻った今、もう負ける気はいたしません。
信玄や謙信、そして新たな敵の気配などもありますけれど、信奈や良晴たちの、この絆があればきっと。次の巻が待ち遠しいです。


出番自体は多くないのにいいところをしっかり持っていく長秀さん。満点です。