まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

織田信奈の野望8

織田信奈の野望 8 (GA文庫)

織田信奈の野望 8 (GA文庫)

ストーリー
浅井朝倉連合軍との戦いでの活躍の結果、北近江を治めることとなった良晴。
竹中半兵衛に匹敵する頭脳を持つ軍師・黒田官兵衛が配下に加わり、不安だった内政に関しても安泰に。
遅れてやってきた信奈に命じられ、中国地方で蜂起した毛利家を討つこととなった相良軍団だったが……。



二兵衛、ここに並び立つ。
この時代に詳しくない私でも名前だけは知っている名高き軍師、竹中半兵衛黒田官兵衛が、遂に良晴の配下に揃いました。
いやはや、テンション上がりますね! これまでも、知っている武将が出てきたときなどには興奮したものですが、今回はまた格別です。
もう、このふたりに対する期待が高まるばかりだったのですが、これがまた、双方期待を裏切らない大活躍を見せてくれまして、特に終盤など、胸の鼓動が鳴り止みませんでした。
中国攻めがお話の焦点になっているため、勝家や長秀さんを初めとした織田家武将陣はほとんど出番なし。
一応信奈のことも描かれるけれど、基本的にはずっと良晴軍団のことばかりでした。
でも面白い。登場人物の数はぐんと少ないのに、盛り上がりが凄まじかったです。
これも、半兵衛ちゃんと官兵衛の類まれなるスター性、そして軍団結成当初からずっと良晴のそばにい続けた五右衛門の相変わらずの奮闘ぶりによるものでしょうか。ただ、この中に犬千代がいないことだけは、どうしても寂しく感じてしまいますけれど。


官兵衛は、登場時は「また面倒な子が増えた」と頭を抱えたくなる感じのお子さまでしたが、話が進むにつれて印象が一転。
溢れる才能を持て余した少女が、良晴や信奈、半兵衛ちゃんと接することで少しずつ見聞を広げ、精神的に成長していく様子が目に見えました。
特筆すべきは、やはり半兵衛ちゃんとの関わりですかね。
初めのうちは半兵衛ちゃんを侮っているかのように見えた官兵衛ですが、彼女の強い信念や決心、他人を思いやる人柄、そしてその才能に触れた結果、いつの間にか心の距離が縮まっていました。
毎度のごとく官兵衛を怖がっていた半兵衛ちゃんも、きっと同じように。まあ彼女のことですから、もしかしたら初めから官兵衛のことを見抜いていたかもしれませんが。
それからいまひとり、私も知っている武将・山中鹿之助が新キャラとして登場しました。
お色気要員としてもギャグ要員としてもなかなかに優秀な子でしたが、ちょっと勝家とキャラがかぶってる気がします! 気のせいならいいんですけども!
とはいえ、鹿之介ちゃんもただのサービスキャラではなくて、彼女は彼女なりの強い思いを持っているのですよね。
それが最終的にああいう行動へとつながったのだと思うと、それがいいことなのか悪いことなのかは、判断しかねるところですが。


官兵衛も鹿之介ちゃんも、もちろん五右衛門も素晴らしかったけれど、今回のヒロインはやっぱり半兵衛ちゃん。
残された少ない時間で、半兵衛ちゃんが、官兵衛に、そして良晴に語る場面は、語り口こそ優しいけれど、私の目にはとても壮絶に映りました。
この若さにしてここまで達観してしまえるものでしょうか。良晴への忠誠心、京都の歴史を崩すという気概、最後の最後まで秘密を隠し通す気力、どれを取っても家臣としては一級品なのでしょう。
でも良晴にとっては、彼女もひとりの女の子で、半兵衛ちゃんのような子が、自分の先行きを予感しながらもずっと無理し続けて働いていたのだと思うと、なんとも切ないものが押し寄せてきます。
あまりに頼りになるから、頼りにしすぎてしまった。もちろん半兵衛ちゃんとしてはそれで良かったのだけれど、良晴の後悔はいかほどのものでしょうか。
それから、また小憎らしい活躍をしてくれた前鬼さんの真意は、果たして。前鬼に発破をかけられた良晴は、今度こそ全ての実を拾うことができるのでしょうか。
たくさんの心配と不安と、少しの期待が胸に渦巻いておりますが、このもやもやは次の巻で解決されるのかな。楽しみです。


遂にねねに嫁フラグが……?