まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

織田信奈の野望5

織田信奈の野望 5 (GA文庫)

織田信奈の野望 5 (GA文庫)

ストーリー
浅井・朝倉のみならず、武田信玄までもが動き出し、次第に追い詰められる織田家。
そんな中、十兵衛が突然良晴と祝言をあげると言い出し、信奈は大激怒。
相良軍団は解散し、良晴はひとり伊勢の滝川一益の元へと左遷させられることに……。



戦国最強・武田信玄動く! こんな大ピンチの中、思い込みと勘違いと卓越した行動力により良晴と結婚しようとする十兵衛ちゃん
金ヶ崎の褒賞についてせっかく信澄や長秀さんが尽力してくれたというのに、よりによってこのタイミングでこれですよ。
天才なのに、ああ天才なのに……十兵衛ちゃん、なんて残念な子! でも可愛い! 可愛いからいいか!
信奈の煮え切らない恋模様を見ていると、十兵衛ちゃんのこのまっしぐらな恋を危うく応援したくなってきてしまうから危険ですね。さすがは光秀、こんなところまで織田に仇なすか……。
信奈によって伊勢に放り出された良晴は、織田家四天王の最後のひとり、滝川一益にようやく遭遇。
しかしあれですか。またロリですか。なんで織田陣営はロリばかりなんですか。いや、個人的にはとても嬉しいけれど。
元忍者の上に不思議な術まで使える一益ちゃん、初登場なのに大活躍でした。無邪気な、でも上から目線のお姫さまといった感じの性格もいいですね。


三方ヶ原の戦い姉川の戦い、岐阜の戦いと、窮地に立たされた織田軍は連戦連戦。
まともにラブコメをやっている暇さえほとんどなく、各地で戦が繰り広げられました。
織田軍サイドが描かれるのはもちろん、武田軍サイドについてもかなり詳しく描かれていたのが印象的ですね。
今回に限っては、信玄がもうひとりの主人公であるかのように思えました。
良晴が来たことで歴史が変わりつつある戦国の世。ちょっとしたことで歴史は動いてしまうというのに、自分の思うがままに、信玄にさえ助言をしてしまう良晴。
歴史的視線で見れば、何やってんだよと言いたいところですが、目の前に命を散らそうとしている人がいるのなら、助けようと思うのもまた人情というものです。迷いながらもそうすることができてしまうあたりが、良晴さんの良晴さんらしいところなのだろうと思います。
ただ、信玄が残るとなると、天下の行方が一気に分からなくなってくるんですよね。史実で織田軍が勝った戦いであっても、こちらの世界でもそうだとは限らない。緊張感でいっぱいのページが続いて、結構くたびれました。


終盤は、なんといっても斎藤道三が格好良かったですね。ああ、敵ながら山本勘助も。
先行き短い老体に鞭打って、次の世代の若者、自分が主と見定めた殿に自らの夢を託し、戦う彼らの姿は胸に響きました。
どうしても非情になりきれない信奈が、道三を救いに行くのは、もはや誰にも止められないことだったでしょう。またここで長秀さんがめちゃくちゃ格好良くて惚れてしまいそうになるんですが、そんな長秀さんでも。
もしかしたら信長だったら行かなかったのかもしれません。でも信奈は、これでいいのだろうと思います。
そこで敢えて信奈を止めようとしない良晴がまた、素敵なんだなあ。主従そろって全部拾おうだなんて、実に欲張りなもんですが、そんな無茶苦茶を達成してしまう何かが、信奈と良晴のコンビにはあるのですよね。


まさかの決着。そしてふたりの時間。
とても幸せな場面であるはずなのに、どこか淋しくて切ない。思えば、この日もこの曲も、そんな感じではありませんか。
戦乱の中では、嬉しいことばかりは続きません。同時に、悲しいことばかりが続くわけでもありません。
せめて、この曲が流れている間くらいは、信奈も良晴も、他の全ての登場人物たちも、幸せでいてもらいたいものですね。
やっと一歩進んだふたりの関係は、今後どんな展開へもつれ込んでいくのでしょうか。次巻が楽しみです。


一益ちゃんの喋り方にやたら癒される。