まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

竜と勇者と可愛げのない私7

竜と勇者と可愛げのない私7 (電撃文庫)

竜と勇者と可愛げのない私7 (電撃文庫)

ストーリー
魔王と対決するため、遂に魔界へとやってきたアンジュたち一行。
アイネイアとノェルの超戦闘体を起動させようとする一行の前に、クリームヒルトとイングヴェルデが立ちふさがる。
超戦闘体を駆使して戦ってくる二人に苦戦を強いられるアンジュたちだったが……。



いよいよこの大好きなシリーズにもクライマックスが近づいて参りました。
当初の予定とはだいぶ異なるものの、竜騎士となったレックス。“完全燃焼”によって最強クラスの魔法使いとなったアンジュ。
殺戮天使の力を得たトモエ。そして、魔王の娘でありながらレックスたちに力を貸すことを決めたアイネイアとノェル。
初めの頃から比べると、全体で見ても、個々人としても、ずいぶん豪華なパーティになったものです。時間的には、それほど長くは経っていないと思うんですけれども、短い期間で多くの経験を積んだ結果ですよね。
そんな勇者御一行様が、遂に魔界へと足を踏み入れました。アンジュたちだけだったら、右も左も分からずに往生するところでしょうが、アイネイアとノェルのおかげであんまり不安感はありませんね。持つべきものは友。
しかし、他の魔王の娘たちからすれば、アイネイアたちが裏切り者に見えてしまうというのもまた道理。
特にイングヴェルデは、そういった意識が強いようでしたね。クリームヒルトは、まあ、娘たちの中でもまた特殊な部類に入るんでしょうけど……。
それにしてもアイネイアさん、実に格好いいですね! イングヴェルデとの師弟対決が熱い。敵に回したときにはあれほど怖い相手でしたが、それだけ味方となると心強いものです。魔界広しといえど、彼女以上に頼りになる人物はそうそういないのではないでしょうか。


クリームヒルトたちとの戦いの中、満を持して登場した大ボス・魔王メイ=ヘム。
窮地をくぐり抜けたばかりだというのにこの仕打ちですよ。いったいどうなることかと思いきや、意外にも魔王氏はなかなか話せる相手の様子。
自分の民を守るために戦っているだけで、基本的にはいい人(?)なんですねえ。前回で竜王の好感度がガタ落ちした分、魔王の株がぐいぐい上がっていきます。
唐突にやってきた魔界の危機に立ち向かうため、魔王と勇者がまさかの共闘。これまた熱い展開ではありませんか。
しかも、メイ=ヘムとレックスの独壇場かと思いきや、まさかまさかのアンジュ大抜擢ですよ! いやこれは嬉しい。
今までもそれなりに活躍してきましたが、やっぱり一番目立っていたのはレックスだったので、この大舞台でアンジュが主役らしい働きをしてくれるというのは、彼女をずっと応援してきた身として大変に興奮します。
だって、ようやく、レックス以外の人物にアンジュの力が認められたということなんですからね。それが人間でも竜でもなく、魔王によってもたらされたというのが、また微妙に皮肉の効いているところではあるんですけれども。
昔のアンジュだったらたぶん、この戦いには参加しなかったでしょう。でも、レックスの人柄に触れ、一緒に戦ってきた今の彼女だからこそ、魔界を守るために戦うことができたのですね。レックスも罪な男ですね。


熾烈を極めた、魔王、勇者、超戦闘体の入り交じる戦い。そしてそんな中で、ひとつの想いが実を結びました。
ああ、やっとですか。ずいぶんと長いことかかってしまいましたね。
「可愛げのない私」が、ここに来てまた効いてくるんだなあ。そう思っているのはあなただけなんですよ。アンジュ。これで少しは分かってくれたでしょう?
いやもうですね、このシーンはですね、台詞も地の文も最上級に可愛すぎて困ってしまいました。
心から、よかったね、おめでとう、と言いたいですね。
あと、さりげなくトモエさんがいい働きっぷりでした。素晴らしいニヤニヤをありがとうございます!


あとがきによれば、次で最後になるとのこと。さあ、残すところはあと少しです。
アンジュとレックス、トモエの今後。そして魔王やその娘たち、竜王と竜たちのこと。
レックスはその願いを叶え、人間界と魔界との間に、架け橋をつなぐことはできるのでしょうか。
終わってしまうのは淋しいけれど、この物語の結末を、しっかりと見届けたいと思います。最終巻。楽しみです。


あのシーン、イラストも最高でした。拡大コピーして額縁に入れて飾りたい勢い。