まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

聖断罪ドロシー01 絶対魔王少女は従わない

ストーリー
帝国に攻め込まれ、滅んでしまったレベルデッド魔王国。
間一髪逃げ出した王女のドロシーは、護衛の魔法使いカルアと共に、追っ手をかわしながら逃避行を続けていた。
正義感の強いドロシーは、追われる身ながら、行く先々で困っている人を助けようとする正義感の持ち主で……。



十文字先生の新作。亡国の王女と少年魔法使いの逃避行バトルアクションですね。
面白かったです。敵味方問わず魅力的なキャラクターや、スピード感のあるバトルに心躍る作品でした。
まだ始まったばかりで、今回は導入編といった印象も受けますが、いくつかの謎も提示されましたし、これからお話が深まっていくにつれて、どんどん盛り上がっていくのではないかと思います。


何よりまず、カルア&ドロシーのコンビがいい。
元王女だからか、微妙に世間知らずで、自分の思うように行動してしまうドロシーと、それに振り回されるカルア。
でも、そんなドロシーのわがままはカルアがいるからこそのもので、そこにはぱっと見では分からないふたりの強い信頼関係が隠れていて、とても素敵です。
自分たちが追われているというのに、人助けなんてやってられないというのは、カルアからすれば全くもって正しい意見でしょう。
でも、物語の主人公としては、やっぱり目の前で困っている人々を華麗に助けてほしいわけです。
そこでドロシーが助けることを主張する。カルアは苦言を呈しつつも、渋々それに付き合う。もちろん、ドロシーが行きすぎてしまうときは、カルアがしっかりとそれを止める。
実にバランスの取れたコンビだと思います。
こうやって書くとドロシーがカルアに頼りっきりのようにも見えますけど、カルアも意外と、精神的にドロシーに依存している部分が大きいので、お互いに支え合っているというのが、より近いのではないでしょうか。
漫才じみたかけあいも楽しいですね。ドロシーの独特な感性によって明後日の方向に飛んでいく会話に、何度も笑わせられました。


コンビでいうと、アンナマリー&シズのふたりも実にいいキャラでしたね。
帝国の軍人としてドロシーたちを追いかける彼女たちですが、あっさり敵と認識してしまうにはもったいないくらいの魅力に溢れていました。
単純な敵というよりは、凄さを認め合っている良きライバル(?)同士といいますか、そう、怪盗と名刑事のような関係なのかなと思います。
今回も犯罪組織に捕らわれた子供たちを救うために共闘していましたね。王道的な展開ではありますが、大好きです。
ドロシーがボケでカルアがツッコミと仮定するならば、こちらはシズがボケでアンナマリーがツッコミでしょうか。
それぞれのコンビ内での会話はもとより、4人揃ったときの混沌としたやりとりもまた楽しかったです。
多少話し合いの余地があるとはいえ、敵は敵。これからもアンナマリーたちは、ドロシーたちを追いかけ続けるのでしょう。
思えば、お話の出だしもアンナマリーたちとの戦いでした。今後も何度も繰り返されて、お約束の黄金カード的な扱いのバトルになっていくのではないでしょうか。


追って追われて、人を助けて、次の町へ。あまりにサラリとしていて、むしろ清々しい終わり方でした。
魔王の血のことや、虚神のこと、魔法のことなど、気になる謎や伏線がちらほら。
それから、ドロシーに対するカルアの思いが、これからどうなっていくのかということも重要ですね。
王女を守る者として、あくまで一歩引いた立場でいようとするカルアですが、ドロシーはカルアをただの護衛とは思っていないだろうし、今後の移り変わりに注目していきたいところ。
それが最終的に恋愛関係になるのかどうかは、まだ分かりませんけれどね。ともあれ、次巻が楽しみです。


イラストはすぶりさん。表紙のドロシーの瞳に吸い込まれそうになりました。
魔王モードドロシーもいいですね! もっとバトルシーンのイラストが見てみたいです。


漢字だらけの呪文詠唱にロマンを感じる。