まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

まよチキ!12

まよチキ! 12 (MF文庫J)

まよチキ! 12 (MF文庫J)

ストーリー
始業式での衝撃的なプロポーズの後、晴れて恋人同士となったジローとスバル。
涼月やマサムネ、紅羽や鳴海姉妹たちも、それぞれの想いを胸に秘めつつ、ジローを励ます。
そしてジローは、涼月家の執事になることと、スバルと結婚することを認めさせるべく、近衛流との最後の戦いに挑む……。



祝完結。なるべくしてなったエンディングと申しましょうか。12巻に渡った物語を綺麗に締めてくれたと思います。
ブコメディの根幹に関わるような大きな出来事は、前巻のプロポーズで完成されてしまったので、最終巻となった今回は、ジローとスバルが未来に向けて共に歩んでいくための、ちょっとした後始末という感じ。
ジローに想いを寄せていた奏とマサムネ。スバル(男)を慕っていた紅羽とナクル。ついでにシュレ先輩。
そして、愛する娘を、かつて自分と殴り合ったチキン野郎に奪われようとしている流。
ある人に幸せが訪れるならば、ある人には悲しみが訪れるもので、その悲しみのひとつひとつに、丁寧に決着をつけてくれました。
各章タイトルがそれぞれのキャラクター名になっていて、読み終わってから目次を眺めていると、なかなかじんわりくるものがありますね。


紅羽や鳴海姉妹のエピソードも良かったけれど、やっぱり注目したいのは恋する乙女たちのお話。
マサムネさんはいいところまで行っていたと思うんですけどね。個人的に応援していただけに、ちょっと切ない。
とはいえ、ジローなんかがわざわざ心配するまでもなく、マサムネはひとりでまた立ち上がることのできる、強い女の子でした。
少し涙を浮かべるくらいはいいじゃないですか。ねえ?
キスでもなく、ハグでもなく、握手でお別れというのにまた、胸がきゅんとさせられました。頑張れマサムネ。
それにしてもこの場面のマサムネさんのイラスト、目に光がなくてちょっと怖いんですけど……。本当に大丈夫なんですかこの子!
一方の奏お嬢様ですが、この期に及んでこんなぶっ飛んだことをしてくるから本当に侮れません。最後までブレずに彼女らしいですね。
しかしそこでジローさんの切り返しですよ。あなたいつの間にこんな女たらしスキルを磨いてたんですか? さすが12巻続いたラブコメの主人公は違うな!
ちょっとばかしキザったらしいですが、こんなふざけた関係が、このふたりにはやっぱり一番似合っていると思いました。
驚くほど表には出さなかったものの、奏だってきっと、胸の内では泣いているのではないでしょうか。それをそっと心にしまって、ジローやスバルをおちょくってしまえるあたり、マサムネとは少し違う強さを持ったヒロインでしたね。
ジロー以外の相手がいつか見つかるといいのだけれど。余計なお世話なんでしょうが、彼女に関しては結構心配です。


立ちはだかるはラスボス・流。奇しくも1巻と同じ顔合わせになるわけで、いやはや感慨深い。
ただの親バカパパさんかと思いきや、意外としっかりした、父親らしい一面もあるのだなと感心いたしました。
まあ、もしジローとスバルが結婚するのならば彼が義理の父親になるわけで、多少はしっかりしていてくれないと困るんですけれども。
結局最後は拳になってしまうのかと思いましたが、まあ、ここまできたらこうする他なかったのかなと。
流本人は本気だとか言ってましたけど、こんな勝負を提案する時点で、ある程度はジローのことを認めているということなのでしょう。あとは自分の立場と、これまで頑なに娘を守ってきた父親としての意地とに、けじめをつけるための戦いということだったのだろうと思います。
なんだかんだ言いつつ、流もジローも楽しそうで何よりですよ。初期の険悪ムードが嘘のようです。いや、ほんとに。


とりあえず、ジローとスバルにはおめでとうと言っておきましょう。
というかあなたたち、恋人になった途端にいちゃいちゃしすぎです。人前です。しかもジローに失恋した女の子たちの前です。ちょっとは自重という言葉を覚えましょう。
これで男装執事とチキン野郎のラブコメディは終わりを迎えます。今まで色々と言ってきましたけれど、うん、終わってみたらやっぱり面白かったし、終わってしまうのは寂しいですね。これだけは自信を持って言えるのですが、読みやすさという点については特筆すべき作品でした。
最後にスバルの笑顔で物語が終わってくれて本当によかった。そう思います。これからの彼ら彼女らの未来は、きっとこの笑顔のように、明るく輝くことでしょう。
楽しい作品をありがとうございました。


坂町母と流の関係には笑ってしまいました。ここでかよ!