まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

この中に1人、妹がいる!7

この中に1人、妹がいる! 7 (MF文庫J)

この中に1人、妹がいる! 7 (MF文庫J)

ストーリー
雅との血縁を母・鹿野子に認めてもらおうと直談判に出る将悟。
協力を申し出る衣楠に対し、直後、鹿野子から将悟を監視せよとの直令が下る。
命令に従い、血縁関係の証拠を見つけようと奔走する将悟たちを邪魔し始める衣楠だったが……。



妹の正体が分かった(?)り、告白があったりと、パッと見物語が大きく動いているように思えるのだけれど、その実基本的な部分は1巻の頃から全く変わっていない。これって、地味に凄いことだと思います。
結局、将悟がやっていることといえば「誰が妹なんだ」に尽きるわけです。どんなに先へ進んでいるように見えても、最終的には必ずそこへ帰ってきてしまう。まるでブーメランかヨーヨーのように。
ミステリーでいえば、真犯人がずっと明かされないままに、8冊も出てしまったことになります。
しかし、巻の最初と最後では同じ場所にいても、中の物語自体を大きく揺り動かすことはできます。そこの振れ幅が大きいから、お話が動いているかのように錯覚するし、飽きずに読めるのではないかと思います。
ともすればワンパターンにもなりそうなところですが、うまいこと角度を変えて揺らしてくるんですよねえ。個人的には柚璃奈の登場が大きかったかな。あの子は本当に、ヒロインとしても、引っかき回し役としても、素晴らしいキャラだと思います。


すっかり、雅=妹、心乃枝=恋人、という図式を描いてしまっている将悟。
雅が妹なのだと頭っから信じ込んでいる空回りっぷりが、見ていてとても残念です。何度もちょっとした証拠を信じて痛い目に合ってきたのに、こいつには学習能力というものがないのでしょうか。
まあ、雅が妹なのだと確定すれば、将悟にとっては全てがうまくいくわけですから、思い込むのも仕方ないことなのかもしれませんが……。
雅の気持ちを考えると、まだ何も確かじゃないのに、悠々と心乃枝とデートなんかして、いちゃいちゃ恋人気分を楽しんでいる将悟には実にイライラさせられるんですよね。早く目を覚ませ。ガツンと一発入れられないと覚めないのか。
いや、雅も雅ですよ。将悟が心乃枝を選んだからって、それがなんなんだよ! 振られた言い訳に、自分がよそからもらわれてきた子なんだ、なんて、よくもまあそんな風に思えるものです。そりゃあ父親も悲しむってもんですよ。
将悟のことが好きなら、自分が将悟の妹かもしれないなんてことは、他でもない、雅自身が真っ先に否定しなければいけないのではありませんか。


不安定な事実の上で、勝手に安心して、踊っていた将悟たち。でも、ああ、やっぱりこうなってしまうのですね。
いくつか見えていたほころびに目が行かなかったせいで、見事に崩れ落ちました。将悟や雅にとってはいい薬になったのではないでしょうか。
ここまできても、真実は未だ見えてきません。鹿野子は何かを知った上で隠しているのか? 瀬利の思惑はどこにあるのか? 『ふうちゃん』は「妹」なのか? 謎は深まるばかりです。
真の意味で物語の根幹が動くのは、さて、いつになるのでしょうか。次巻が楽しみです。


凛香が女性として素敵すぎて、この扱いはあまりに不憫で辛い。彼女には幸せになってほしいものです。