まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

僕は友達が少ない(8)

僕は友達が少ない 8 (MF文庫J)

僕は友達が少ない 8 (MF文庫J)

ストーリー
文化祭当日になって、映画の仕上げを担当していた理科が倒れ、映画が未完成となったことで上映は中止になってしまう。
残念な結果には終わったものの、互いの絆の深まりを感じながら、騒がしい活動の日々へと戻っていく隣人部一同。
ところがそんなおり、星奈をライバル視する遊佐葵が隣人部に対して目をつけ始め……。



おみそれしました。いやはや、前巻のときにも言ったような気がしますが、まさかここまで心を揺さぶられる作品になろうとは。
7巻から8巻までの展開は、当初から予定されていたものなんでしょうか。構成といい、伏線回収といい、本当によく計算されているなあと感じます。
もちろん、ギャグパートも相変わらずキレッキレで、たくさん笑わせてもらいました。「友達つくりゲーム」なんかは特に素晴らしかったですね。
いやいや、改めて、やっぱりこの作品は面白いですよ! 読んでて良かった。


7巻の衝撃のラストからしばらく。多少間があいたこともあり、もどかしい気持ちでいっぱいになりつつページをめくります。
広がっているのは、少しだけ変化のあった、でも基本的にはいつも通りの隣人部。あんなことがあった後でも堂々と普段通りのフリを装っていられる小鷹さんは、大物なのか、はたまた図々しいのか。
いえ、大物というなら理科の方ですか。結局のところ小鷹は、彼女に大目に見てもらったという形になるのでしょうしね。
そんな理科が映画制作の途中で倒れてしまって、あれだけ波乱がありながらも頑張って作り上げた映画が上映できなくなってしまい、彼らはどんな顔をするのだろうかと思いきや……。
まさか、よりによって夜空があんなことばを口に出すとは思ってもみませんでした。
私はどうしても、隣人部という場は、いつまでも1巻や2巻の頃のままでいるものなのだと勘違いしてしまうのですね。
巻の終わりに何か事件があって、次の巻の頭では何事もなかったかのように元に戻る、という流れがあったためだと思うのですが、実は本当に何もかもが元に戻っているわけではなくて、そのたびに少しずつ変化があったんですよね。当たり前のことなのだけれど、巧妙な構成にだまされて、つい忘れがちになってしまう。
変わっていたのは別に小鷹と理科だけではなかったのです。夜空だって星奈だって変わっています。もう誰も、彼らをぼっちなどとは呼べません。自分たちでは気付いていないらしいところが、なんともじれったいところではありますが。


始まりはいつも突然。とはいえ星奈さん、いくらなんでも突然すぎやしませんか。あと、小鷹は殴られても文句は言えないと思う。いやほんとに。
しょうがないですよね。小鷹が変わろうとしなくても、どうしても変わってしまうものなのです。お互いに人間なのですから。
またも逃げ出したヘタレマスター小鷹さん。そこに差し伸べられる新しい手。
もしかして、このまま終わってしまうんじゃないかと怖くなってきたところで、彼、いや彼女の登場ですよ。おいなんなんだこの超絶イケメンは。
彼女といい、理科といい、キャラの使い方が実に上手いと思います。隣人部の中で目立っていないキャラがいないじゃないですか。もうみんな主人公ですよ。
最高に格好良いのに、よりによってオチがそれかよ(伏線だったのかよ)! 思わず突っ込まされてしまうあたり、見事にしてやられました。


そしてエピローグへ。もはや理科さんの独壇場であります。振り返ってみれば、今回は最初から最後まで、とことん理科さんのための巻でしたね。
本当にねえ、登場時はただのネタキャラとしか思えなかったのに、今となってはこの圧倒的オーラですよ。隣人部の核となっているのは、実は理科だったのだと言われても納得できるような気がします。
そして、理科のあの叫び。小鷹との舌戦のあとの、最後の大文字ですよ。もしかして、もしかするのか? 彼女がそうだったのか?
まだ確定ではないものの、背すじがゾワッとするのを覚えました。たまりませんです。
さて、公式のあらすじにもあるとおり、物語の終幕へ向けて、確かな一歩を踏み出しました。
最後にどんなラブコメディを見せてくれるのか。小鷹に、星奈に、夜空に、何が起こるのか。楽しみでなりません。


え? まさかの小鳩×夜空、マリア×星奈の方向に行くんですか? そ、それもアリかな……。