まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

デーゲンメイデン 1.台場、両断

ストーリー
長い時を経て異能と人格を得た伝説の武器たち・Dアーム。
美少女Dアーム、名刀・薄緑と契約を交わした若林錬司は、Dアームを管理・収集する“弁慶機関”の新米として働いていた。
ある少女の護衛を任された錬司たちだったが、襲撃者のひとりを逃してしまい……。



伝説の武器Dアームを駆使して戦う現代バトルアクション。田口先生の新作ということで手に取りました。面白かったです。
剣や刀が美少女に変身する、というのはわりとよく見られる設定ですが、やっぱり、武器はただの道具ではなくて自分の相棒なのだというイメージが強いからなのでしょうか。ともあれ、美少女がたくさん出てくるのはいいことです。Dアームは女性だけではありませんが。
古今東西の有名武器の名前が次々に登場してくるのもいいですね。好きな人は相当テンションが上がるのではないでしょうか。
私はあまり詳しくないので、名前だけでも聞いたことがあるものはミョルニルとクラウ・ソラスくらいでしたけれども。
内容についてですが、とりあえず、プロローグからいきなり重い展開で少々へこみました。完全に油断してたよ……。


1冊かけて描かれたメインテーマは、主人公の精神的な成長ですかね。といっても、彼の信念自体はずっと一貫しているようのですけれども。
世界を救うために人を斬らねばならないのに、錬司はどうしても斬ることができずにいます。
見ようによってはヘタレとも取られかねないし、実際に作中ではそんな扱いを受けている節もありますが、個人的にはこれが、人として当たり前の感情だと思います。ましてや、彼には痛ましい記憶があるのですから。
そもそも、Dアームを壊すのが難しいから伝承者の方を殺せばいいなんて真顔で言っている方がおかしいのですよ。
しかしもう、錬司は戦うことを選んでしまいました。戦いから逃げることはできません。
それなら、自分にできる戦い方でやっていけばいい。無責任でお気楽な読者からすれば簡単なことにも思えますが、彼にとっては大きな決断だったに違いありません。
きっと薄緑と糸の叱咤が効いたんですね。小さな女の子から思い切り罵られる! うん、これはいい! とてもいい!
特に薄緑は、源義経が使っていた刀だということもあり、ことあるごとに錬司と元カレを比べてくるのが微笑ましかったです。ライバルがあの義経となったら、もうひたすら頑張るしかないじゃないですか。ねえ?


最後のバトルは、吹っ切れた者同士の戦いという気持ちよさがありました。覚悟を決めた錬司と、それに付き合うことを決めた薄緑、ふたりの確かな絆をしかと感じました。
登場時はただの小物にしか見えなかった阿形も、最終的にはなかなか味わいのあるキャラになりましたね。
謎や伏線がばりばり張られましたが、そんな陰謀うごめく中、錬司にライラ、杏、糸、それに、弁慶機関や秘密結社ロキのメンバー等々、伝承者とDアームたちが、次はどんな戦いを見せてくれるのが、実に楽しみです。
ああそれから、薄緑、膝切ときて、残るふたつの変身(?)も気になるところ。膝切もなかなかおいしいキャラでしたし、次に出てくる人格にも期待ですね。わくわく。


イラストは柴乃櫂人さん。スマートなキャラ造形によって雰囲気がよく出ていると思います。
個人的にはカラーページのライラさんがクールで好きですね。あと膝枕。


お台場で聖地巡礼するか……。