まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

はたらく魔王さま!5

はたらく魔王さま! 5 (電撃文庫 わ 6-5)

はたらく魔王さま! 5 (電撃文庫 わ 6-5)

ストーリー
海の家から帰還した一行は、アパートがまさかの地デジ対応になっていることに驚愕する。
情報収集にテレビが有用だと考えた魔王は、芦屋の反対を言いくるめ、薄型テレビの購入に踏み切ることに。
家電に詳しくない魔王たちは、アドバイザーとして恵美の同僚・梨香を誘い、大型電気店へと向かうのだが……。



かたくななまでに質素倹約を貫いてきた魔王城にも、ついに地デジ化の波が!
ケチケチ悪魔・芦屋は当然として、真奥もテレビ導入には反対するものと思いきや、なんとその真奥がテレビ購入を強く推進。
インターネットにはない、テレビならではの情報収集力をただひとり理解しているところは、さすがといったところでしょうか。
自慢げに数千円分の家電量販店のポイントを見せびらかして、芦屋の反対を抑えこんでいく相変わらずの庶民ぶりを見ていると、毎度ながら、魔王とか悪魔大元帥とかどうでもよくなってきますけど。
いつもは働かないダメ人間、じゃない、ダメ天使の漆原ですが、常識という観点からいえば、真奥や芦屋よりもだいぶマシなような気がしてくるから不思議です。


テレビを買うのはいいけれど、よりによって梨香を助っ人に呼び寄せちゃいますか芦屋さん! よもやデートかと舞い上がらせておいて華麗に突き落とすとはまさに鬼畜の所業! あなたは鬼か悪魔ですか。あ、悪魔でしたね。すみません。
恵美はおろか、真奥や鈴乃にまで秘めたる想いを知られてしまいましたが、肝心の芦屋は安定の朴念仁。
そもそもこの悪魔に、女性を好きになるという概念があるのかどうか大いに疑問です。もちろんそれ以前に種族の問題ってやつが立ちふさがっているわけですが、まあそのへんは千穂が乗り越えちゃってるし。
今のところはまだ、真っ赤になって慌てふためく梨香を見てニヤニヤを楽しむ程度ですけれども、もし本当に、彼女が本気のアプローチをし始めたのなら、真奥の言う選択肢を採らなければいけなくなるのかもしれません。
自分たちがいるだけで親しい人を巻き込んでしまう。それが親しい人であるだけに、鈴乃が恐れるのも無理ないことだと思います。
鈴乃が、真奥のように割り切ることができればそれでいいのでしょうか。そもそも、梨香にとってはどちらが幸せなのでしょうか。
結局のところ、梨香本人に聞かなければ分からないことであるようにも思えますが。


またも現れた異世界の住人、そして遂に実害を被ってしまった、一同の大切な友人である女の子。
ただひとりの女子高生のために、悪魔と勇者が共同戦線を組んで立ち上がる展開がとても熱い。
今までにもまして漆原の活躍があって嬉しいですね。戦闘要員としてはほぼ無能でも、頭脳労働では彼の右に出るものはいないのです。鈴乃とのコンビも妙に似合っていたなあ。
しかし誰よりも大きな動きがあったのは間違いなく千穂でしょう。現代日本サイドの象徴のような存在だった千穂が、ああ、まさかこんなことになってしまうなんて。
さらに一歩、奥深くまで足を踏み入れてしまった感のある千穂ですが、ずっと守られてばかりで歯がゆい思いもあったでしょうし、真奥を慕う彼女としては本望なのかもしれないですね。
こちらとしてはやっぱり、危険な目にはできるだけ遭ってほしくないんですけれども。


恵美の両親に関することや、天使と人間の種族間のことなど、明かされた秘密もあり、新たに張られた伏線もあり。
ひとつ重大な事実を知った恵美が、真奥たちとどのように向き合っていくのかというところが、今後重要なポイントになってきそうです。
ストーリーが次第にシリアス寄りになってきているようにも感じられますが、とりあえず次も、庶民な悪魔たちと千穂、恵美、鈴乃が繰り広げるドタバタと、アラス・ラムスちゃんの癒し度満点の笑顔を期待しています。


アラス・ラムスのなりたいもののくだりで思わず目頭が熱く。