まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

天使の3P!

天使の3P! (電撃文庫 あ 28-11)

天使の3P! (電撃文庫 あ 28-11)

ストーリー
不登校気味の高校生・貫井響は、歌唱ソフトで曲を制作し、動画をアップロードするのを趣味にしていた。
ある日そんな彼のもとに、動画を見たというファンからのメールが届く。
直接会って話がしたいといわれ、迷いつつも出かけた響だったが、メールの送り主は小学五年生の女の子で……。



「小五ロリ」組み合わせると「悟り」などという格言が世の中に飛び回っておりますけれども、そんな中で本当に小五ロリをヒロインに据えた作品を送り出してくる蒼山サグ先生には、純粋な敬意を表したい。
前作、といいますかもうひとつ展開中の某スポーツ作品よりも、さらに1学年若く、いえ、幼くなりました。さすが先生、期待を裏切らないなあ!
今回のテーマはロックバンド。音楽ものが好きな私には嬉しい。しかも演奏するのが小学生の女の子たちときたら、もうそれだけでお腹いっぱいです。
とりあえず表紙の幼女+ギターを見た瞬間に、これは釣られざるを得ないと白旗を揚げました。ずっと眺めていたいですね……。
とまあ、神の見えざる手に導かれるままに読んでしまったわけですけれども、これがまた期待以上に面白い。
240ページ程度の薄い1冊の中にきちんとドラマがあって、小学生たち、そして何より主人公の成長がしっかりと描かれていたと思います。


主人公の響は、高校に入ったのに一度も登校せず、家に引きこもっている不登校児。
そんな響が、自分の曲に興味を持ってくれた小学生の女の子3人と出会うところから物語は始まります。
潤、希美、そら。女の子3人の、ライブがしたい、大好きな教会で思い出を作りたいという純粋な思い。
ロリ萌えだの幼女萌えだのはおいといて、一生懸命に頑張っている小学生の女の子って、とっても素敵ではありませんか?
それは、彼女たちに“健気”という、とびっきりのスパイスが効いているからではないでしょうか。
世の中は大きくて、強い力を持った大人ばかりで、小さな体しか持たない彼女たちにできることは少ないけれど、それでも精一杯背伸びをして、夢を追いかける。
この、けがれのないまっすぐな姿勢は、本当に健気で、だからこそ、その「一生懸命」がより輝くのだと、そんな風に思うのです。


でも、ただ一生懸命なだけでは、やっぱりひっくり返せないものもたくさんあって。
学校のクラスメイトの中に入り込もうとしない潤たち、そしてそもそも、過去のトラウマのせいで学校に行くことさえできない響。
女の子3人に助言をしようにも、自分にその資格がないように思えて、何もできずにいる響の姿が、なんとももどかしい。
うじうじと自分だけの殻に閉じこもっていれば、それは快適かもしれないけれど、殻を破らなければ大空へ飛び立つことはできません。
必要なのは小さな勇気。いつの間にか大切な人になっていた女の子たちのために、小さな勇気を振り絞った響の突飛な行動は、それはもうめちゃくちゃに格好良かったです。なんていうか、すごくロックンロール。ああ、スカッとした。
小学生と出逢えたら、不登校だって吹き飛ばせちゃうんだよ! 小学生って最高だな!


ライブで潤が歌った新曲の歌詞には、思わずぐっときてしまいました。いやあ、最後まで気持ちのよい作品でしたねえ。
ストーリーの流れは真面目そのものでしたが、もちろん皆様お待ちかね、小学生のあれやこれやもたっぷり収録されています。
妹(小五)とのお風呂シーンがやたら多かったですね。大丈夫、肉親だから何の問題もない。ごちそうさまです。
小学生たちだけではなくて、響と同じクラスの女の子・桜花も、とても可愛らしく描かれていました。
まだお話は始まったばかりですが、もしかしたら、これから恋愛要素も少しずつ絡んでくるのかもしれません。お相手が小学生になるのか、高校生になるのかは、そのときの楽しみに取っておくとしましょう。次の巻が待ち遠しいですね。


イラストはてぃんくるさん。相変わらずの透明感溢れるイラストに心が洗われるようです。
パンツも裸もしっかり完備! ありがとうございます!


ちょっと調べたところこのP名、実在する様子。しかしどうやら、響とはジャンルが異なるようですね。