まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

おまえは私の聖剣です。

おまえは私の聖剣です。 (GA文庫)

おまえは私の聖剣です。 (GA文庫)

ストーリー
失踪した家族から十六億の借金を押し付けられてしまった一兎。
債権者に呼び出されて弓弦羽市にやってきた一兎は、突如街に響き渡った警報に戸惑う。
次いで現れた稲妻を操る戦国武将に襲われるが、そこに救いの手が現れて……。



歴史上の人物の力を受け継いだ少女たちが、過去から蘇った偉人たちと繰り広げる異能力バトルアクション。
卑弥呼柳生十兵衛、ワイアット・アープが一堂に会して、雷系モンスターみたくなってしまった立花道雪と戦っていくのは、その場面を想像しただけで面白い。
まあ実は、寡聞にして、立花道雪なる人物を知らなかったのですけれども……歴史には詳しくないのです……。他にも何人か、知らない人物が登場してました。出てきたらその都度調べるのも、それはそれで楽しいものです。
柳生の無刀取りってそんなのだっけ? とか、西部時代の保安官のアープがどうしてライフルやら大砲やら操れちゃうの? とか、突っ込みどころは多々あれど、深く考えはじめたら負けですよね!
歴史を超えたお祭り的なバトル大会なのだから、ひたすらノリのままに読んでしまえばいいと思います。


そんなバトルの中で一兎に与えられた役割は、伏滅機関IXAs司令・咲耶花の「剣」となること。
このあたりは、いわゆる「Kissから始まるラブコメディ」なのですが、いきなりこれでいいの? と思ってしまうくらいにエロい。
まずキス自体が、イラスト込みで大変なことになっちゃっているし、そこから続く契約も、ナニかを彷彿とさせられてしまうような、というか明らかにソレを意識しているような描写で、とても、とても素敵だと思いました!
まあ、エロいとかエロくないとかはおいといて、女の子との契約というのは、いつまで経っても色褪せない魅惑のシチュエーションだと思います。
一兎と一緒になった後の卑弥呼様がまた圧倒的に強くて、思わず平伏したくなる勢い。
柳生やアープと違って突っ込みを入れる気にさえならないのは、卑弥呼が、あまりに神秘的な存在だからでしょうか。卑弥呼ならこれくらいできちゃうかもと思えてしまうのは、かさねた年月の重みが為せる技なのかも。


咲耶花はひとりで勘違いして、ひとりで突っ走って、ひとりで泣いてました。完全なる空回りです。
メインヒロインなのだからもっとどっしり構えていればいいのに、思い込みが激しすぎて、そのくせ人の話も聞かないで、まっしぐらに駆けていってしまうから、危なっかしくて見ていられない。
他人の上に立つ者としてずっと頑張ってきたからこそ、こんな過ちを犯してしまうのかもしれません。
弟や一兎の手を借りつつ、大きな失敗から学び、周りを信じて、頼りにすることを知っていく彼女の姿にほっとします。
少しの犠牲も払わずに全てを守りたいという理想は、黒衣からしたら子供っぽく見えるのかもしれないけれど、それを実行できる人々が口にするのなら、真に素晴らしい理想だと思います。正義の味方はこうじゃなくちゃ。


多少ごちゃごちゃしていた感もありましたが、バトルもラブコメも始終楽しく読みました。
一兎の名前に秘められたギミックや、ジジイの正体など、細やかな伏線回収にも思わずニヤリ。
大樹先生は単巻作品を出している印象ですが、この作品はシリーズ化してもおかしくないような気がします。というか続いてほしい。続いてください。お願いします。
一兎と咲耶花の今後も気になるし、設定上難しいかもしれませんが、一兎自身の活躍も見てみたいですね。


イラストは飯沼俊規さん。扉絵のバトルモード・卑弥呼様が格好良いですね。
それから、上でも書きましたが、キスシーンのイラストが凄かったです。ベロンベロンでした。


小玲ちゃんに撃ち抜かれたい。